研究課題
ハクサイ近交系24系統と優良親系統6系統を交配して、得られた46組合せのF1について、播種後6日の子葉面積と播種後21日の本葉の面積及び、圃場における収量調査を行った。また、両親系統を用いて、SSRマーカーやCAPSマーカーを用いた遺伝子型判定や、RAD-seqにより、系統間の遺伝距離を推定した。雑種強勢の程度について、初期生育と収量の間で相関を調べたところ、播種後21日の本葉の面積と収量にはゆるい正の相関が見られたが、子葉の面積はどの形質とも相関が見られなかった。また、遺伝距離と雑種強勢には全ての形質において相関が見られなかったことから、遺伝距離を指標に雑種強勢が現れる親系統の選抜を行うことは難しいことが明らかとなった。ハクサイ市販品種‘W39’とその両親系統について、表現型の解析を行い、播種後数日でF1の子葉面積が両親系統に比べて大きく、本葉についてもF1で面積が大きいことが明らかとなった。また、40種類以上の植物ホルモンについて、内生含量を両親系統とF1で比較した結果、多くの植物ホルモン含量は、F1では両親の中間型を示すことが分かった。初期生育に着目して、植物サイズに関わる遺伝子や、葉緑体で働く遺伝子について、発現量を調べたところ、F1では、播種後2日において、葉緑体ターゲット遺伝子の発現レベルが両親系統よりも高かった。そこで、RNA-seqにより、ゲノムワイドに両親系統とF1で発現を調べたところ、やはり、播種後2日では光合成や葉緑体局在の遺伝子が有意にF1で発現レベルが高くなる傾向が見られた。一方、ストレス応答関係の遺伝子の発現がF1では両親系統に比べて低くなる傾向にあることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、46組合せのF1について、初期生育と収量の雑種強勢の関係性や遺伝距離と雑種強勢の関連性について明らかにすることができた (Kawamura et al. 2016)。また、市販F1品種W39とその両親系統を用いて、雑種強勢の表現型を詳細に調べ、転写解析により、葉緑体ターゲット遺伝子がF1で有意に発現上昇することを明らかにした (Saeki et al. 2016)。これ以外にも、QTL解析やエピゲノム解析も順調に進展していることから、今年度はおおむね順調に研究が進展したと考える。
今年度、初期生育と収量の雑種強勢の関連性や遺伝距離と雑種強勢の関連性を明らかにしたが、異なるF1集団を用いて再検証する。また、市販F1品種W77のF2集団を用いたQTL解析を実施する。また、エピゲノム解析を行い、両親系統とF1でエピジェネティックな修飾状態が異なる遺伝子を明らかにし、転写への影響や、雑種強勢への関与について調べる予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
BMC Plant Biology
巻: 16 ページ: 45
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