研究課題
ハクサイのエピゲノム情報を両親系統とF1で比較するために、ChIP-seq、MeDIP-seqを実施しており、データの解析方法について検討した。まず、両親系統のMeDIP-seqのデータを用いて、DNAのメチル化を有する遺伝子の同定や系統間比較解析のための条件設定を行った。その結果、両親系統でDNAメチル化を有する遺伝子を同定し、両親系統間でDNAメチル化レベルが異なる遺伝子を同定した。さらに、既に行ったRNA-seqの結果と比較して、DNAのメチル化レベルが遺伝子の発現に及ぼす影響について調べた。その結果、エキソン及びイントロン領域のDNAメチル化レベルと発現レベルには負の相関が見られることが明らかとなった。一方で、両親系統間の転写レベルの差とDNAのメチル化レベルの差との関連性は小さいことが明らかとなった。DNAメチル化レベルの定量性を向上させる為にWGBSを両親系統とF1で実施し、現在解析を進めている。ChIP-seqについても、4種類のヒストン修飾状態について両親系統とF1で比較しており、それぞれのヒストン修飾を有する遺伝子を同定した。現在、系統間でヒストン修飾レベルの差を定量的に比較する方法を検討している。ハクサイ市販品種‘W77’の両親系統の全ゲノムシークエンスを決定し、比較解析を行った。それぞれの系統で遺伝子機能が喪失している遺伝子やゲノム上から欠失している遺伝子を同定した。さらに、SNPsも同定し、その情報を利用したDNAマーカーの作成を行い、両親系統間の多型の判別が容易で、実験作業も簡単なジェノタイピングの実験系が確立できた。現在、収量及び生育初期の葉面積に着目してF2集団及びBC1F1集団を用いてQTL解析を実施している。
2: おおむね順調に進展している
エピゲノム解析の結果、それぞれの修飾を有する遺伝子を同定する条件を設定することができ、両親系統及びF1でDNAのメチル化及びヒストン修飾を有する遺伝子を同定することができた。現在、系統間でのエピッジェネティックな修飾の差を定量的に比較する方法を検討している。また、両親系統のリシークエンスにより、F2やBC1F1分離集団のジェノタイピングを簡便に行える実験系が構築できた。今年度は、データ解析の基礎が構築できたことから、おおむね順調に研究が進展していると考える。
今年度は、エピゲノム解析を行い、両親系統とF1でエピジェネティックな修飾状態を定量的に比較し、転写への影響や、雑種強勢への関与について調べる予定である。また、DNAマーカーの整備と実験系が確立できたことから、F2及びBC1F1集団を用いて、QTL解析を実施し、雑種強勢関連領域を特定する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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