これまで、家族性ALS家系の集積により13家系のFUS遺伝子変異を同定した。そのうち、1家系2例のFUS関連ALS(FUS-ALS)罹患者より本学倫理委員会で承認された手順に則り同意を得て、皮膚生検を行った。これより初代培養線維芽細胞を樹立し、連携研究者の施設にてiPS細胞樹立を行った。運動ニューロン分化後にRNAsequenceなどの解析を行ない、2016年にStemCell Reports誌に報告した。さらにゲノム編集技術を用いたアイソジェニックラインの作出も行った。作出したiPS細胞を用いて、運動ニューロンの特徴的な長い軸索突起を培養環境中で再現することを目的として新規マイクロ流体デバイスでの条件検討も行った。RNAseq解析により、細胞体および軸索に発現している遺伝子プロファイルを同定した。さらにFUS変異病態において変化の見られる遺伝子に着目し、そのうちの一つである遺伝子Xに関してはsiRNAや阻害剤により軸索異常の表現型が改善することを見出した。ゼブラフィッシュを用いた遺伝子Xの過剰発現実験も行い、個体レベルでの表現型の変化も見出している。またライブセルイメージングを用いて、FUSが結合するRNAの動きについても評価を行っている。さらにTARDBP変異およびhnRNPA1変異例についても骨格筋に分化させた表現型解析をおこなってきている。新規マイクロ流体デバイスの利点を活かし、軸索部分におけるプロテオミクスを含めたオミックス解析を追求し、さらなる新規治療標的を見出していきたい。
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