研究課題/領域番号 |
15H05725
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
下田 正弘 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50272448)
|
研究分担者 |
小野 基 筑波大学, 人文社会系, 教授 (00272120)
Muller Albert 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60265527)
苫米地 等流 一般財団法人人文情報学研究所, 仏典写本研究部門, 主席研究員 (60601680)
船山 徹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70209154)
宮崎 泉 京都大学, 文学研究科, 教授 (40314166)
蓑輪 顕量 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30261134)
石井 清純 駒澤大学, 仏教学部, 教授 (30212814)
永崎 研宣 一般財団法人人文情報学研究所, 人文情報学研究部門, 主席研究員 (30343429)
|
研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2019-03-31
|
キーワード | 仏教学 / 人文情報学 / デジタル・ヒューマニティーズ |
研究実績の概要 |
本研究事業は、永続的に利用可能な仏教学の総合的知識基盤を日本に構築し、世界の仏教研究におけるウェブ知識拠点(ハブ)とするという当初の目的を達成するため、以下の四つを具体的課題として定めた。第一に大蔵経テキストデータベース(SAT-DB)自身を充実発展させること、第二に有望な新規国際プロジェクトを支援し、それらと連携してSAT-DBネットワークを拡充すること、第三に人文学の暗黙的方法の可視化を図って人文学テクストの適切なデジタル化を実現するためTEIと連携してTEI-Guidelinesを中心とするデジタルテクスト構造化の方法を精緻化すること、第四に以上の三つの課題を解決するため、ISO/Unicodeとの連携、国内のデジタル・ヒューマニティーズ(人文情報学)に関する研究教育の環境向上、日本の人文学の国際化の支援などを柱とする、研究教育環境全体を整備することである。なお本研究事業の成果を永続的なものと認知させるため、ウェブ上の成果はSAT大蔵経テキストデータベース研究会(以下、SAT)として公表する。 これにもとづき、SAT-DBの基幹データベースに、あらたに (1)『大正新脩大蔵経』校訂の底本とみなされてきた『高麗大蔵経』再雕版との連携を実現し、さらに (2)『大正新脩大蔵経』の図像部12巻のデジタル化をおこない、画像データベースの最先端の国際規格であるIIIF(International Image Interoperability Framework, トリプルアイエフ)にもとづいて公開し、加えて、(3)東大総合図書館との共同事業として、(公財)全日本仏教会、(一財)人文情報学研究所の支援を得て、東京大学総合図書館所蔵の万暦版大蔵経(嘉興蔵)を公開した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究事業は、第一に大蔵経テキストデータベース(SAT-DB)自身を充実発展させること、第二に有望な新規国際プロジェクトを支援し、それらと連携してSAT-DBネットワークを拡充すること、第三に人文学の暗黙的方法の可視化を図って人文学テクストの適切なデジタル化を実現するためTEIと連携してTEI-Guidelinesを中心とするデジタルテクスト構造化の方法を精緻化すること、第四に以上の三つの課題を解決するため、ISO/Unicodeとの連携、国内のデジタル・ヒューマニティーズ(人文情報学)に関する研究教育の環境向上、日本の人文学の国際化の支援などを柱とする研究教育環境全体を整備することを目標として掲げた。 すでに公開された「大正新脩大蔵経SAT大蔵経2015(http://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/satdb2015.php)」には、これらの課題の解決が反映されている。これに加え、当初は予想していなかった「図像」の公開(大正新脩大藏經図像データベース:SAT大正蔵図像DB http://dzkimgs.l.u-tokyo.ac.jp/SATi/images.php)、IIIFコンソーシアムへの参加が実現し、さらにTEIコンソーシアムにおける East Asian/ Japanese Special Interest Groupの設立が達成されたことは、一年半の成果としては予想以上のものである。現在、さまざまな国際、国内プロジェクトから連携の申し入れがつづいている。こうした現状を踏まえると、二年度の本研究計画終了時には、予定以上の成果が得られると判断するところである。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、研究計画書に記した三点、すなわち第一にデジタル媒体上の表現可能性の摸索とそれにもとづく暗黙的方法論の顕在化という観点から仏教学各分野の方法論を検討し、必要に応じてTEI Guidelinesに反映させ東西の壁を超えた人文学の方法論的共有地を開くこと、第二に東洋の人文学の重要課題である外字・異体字問題について、Unicode UCS国際標準符号化提案を進め仏教学を超えて漢字文化圏全体に資する道を開くこと、第三に新規国際プロジェクトとしてコレージュ・ド・フランス「法寶義林」、ミュンヘン大学・シドニー大学「ガンダーラ語写本プロジェクト」およびオーストリア科学アカデミー「SARIT」と連携し、これらの成果全体をSAT-DBに導入して世界最新の知識基盤を創成すること、これらを当初どおり達成目標とする。 Unicode/ UCSの符合化については、順調に登録に向けて進みつつあるばかりでなく、2016年5月20日の国際東方学会において、IRG(Unicode/UCSにおける漢字を扱う委員会)のLu Qin議長を日本に招き、中国、日本の漢字の専門家とともにシンポジウム「漢字文化圏に共通する漢字基盤の構築に向けて」を成功させたことによって、仏教学を超えて日本の学会に認識が共有され、今後の道につながってゆく。 国際プロジェクトとの連携は、先方からの申し入れが相次ぎ、優先順位を定めて実現しなければならない。新規な事業として米国「ベトナム・ノム保存財団」との提携を視野に入れている。また「法寶義林」についてはプロジェクトにとっての重要性の高まりのため、当を連携研究者から本プロジェクト分担者(苫米地)へと変更し全体とのより深い連携を視野に入れた実装を目指す。これに加え、テクストを超えた画像データへの対応について、IIIF規格の日本への普及に努めることを、あらたな目標として据える。
|