研究課題
本研究の目的は、根尖性歯周炎および辺縁性歯周炎に対する新規の創薬・治療戦略を創成することを念頭に、細胞内に侵入した口腔細菌とインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)を介した宿主防御を分子・細胞生物学的に多角的に検討することである。本年度はまず、細胞内に侵入した歯周病原細菌に対するIFN-γ依存的な病原体排除能の評価および、それに伴う炎症性サイトカイン産生におけるIFN-γ誘導性GTPase群の関与について評価を行った。歯周病原性細菌であるPorphyromonas gingivalis あるいはFusobacterium nucleatum を感染させたマクロファージを滅菌蒸留水で溶解したのち血液寒天培地に播種し、嫌気条件下で培養した際のCFUを計測した結果、IFN-γで刺激した細胞において両菌種の細胞内での増殖が有意に抑制されることが分かった。また、各細菌に感染したマクロファージの培養上清中に含まれる炎症性サイトカイン(IL-1α、IL-1β)の濃度をELISA によって測定したところ、IFN-γ誘導性GTPaseの一種であるGBPを欠損した細胞では炎症性サイトカインの産生が有意に低下していることが明らかになった。なお、本研究では当初、luciferaseタンパク配列断片を挿入したシャトルベクターを構築し、これをPorphyromonas gingivalis ATCC 33277株に接合伝達法によって遺伝子導入することでluciferase恒常発現株を作製する予定していたが、現時点では安定発現する菌株を得ることはできていない。
2: おおむね順調に進展している
細胞内に侵入した歯周病原細菌の排除にIFN-γが重要な役割を果たすことが明らかとなり、おおむね順調に進展している。ただし、luciferase発現細菌の作製には新たなシャトルベクターの構築を必要としている。
来年度は歯周病原性細菌に対するIFN-γ依存的な病原体排除の作用機序を明らかにするべく、Porphyromonas gingivalis やFusobacterium nucleatum へのIFN-γ誘導性GTPase群の集積およびNO産生による殺菌効果の検討を行う予定である。またそれに併せて、細胞内侵入した細菌による病態の遷延化・慢性化についてin vivoでの解析も行っていく予定にしている。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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