研究課題/領域番号 |
15H06537
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
山下 知晃 福井県立大学, 経済学部, 助教 (50754553)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 固定資産の減損会計 / 財務会計 / 実証会計学 |
研究実績の概要 |
(主な研究活動):平成27年度は、固定資産の減損損失計上が企業経営に及ぼす直接的な影響について、企業の投資活動や企業戦略の変更に注目して分析を行った。しかしながら、分析については思うような結果が得られなかったこともあり、研究計画(分析視角やリサーチ・デザイン)の再検討を行った。具体的には次のことを研究活動として行った。まず、(a)コーポレート・ガバナンス分野における日本企業の過剰投資行動を分析した先行研究をサーベイした。加えて、(b)企業経営に対して規律づけを与えるという減損会計の機能を損なう原因として、経営者が減損会計を恣意的に行っている可能性(利益マネジメント仮説)を想定し、連続的な減損損失の計上が利益平準化行動(利益マネジメントの一種)と関連しているかに注目した上で実証分析を行った。そして、(c)仮説およびリサーチ・デザインの改善を行うために、巨額の固定資産の減損処理を行った企業(中堅化学メーカー)を事例として取り上げ、固定資産の減損処理が当該企業の企業経営にどのような影響を与えたかについて事例研究を行った。 (主な研究成果):以上の研究活動から昨年度中に得られた結果は次のとおりである。まず、(b)の分析から、連続的な減損損失の計上は利益マネジメントと関連しているというより、企業の実態を反映している可能性が高いことを示唆する証拠が得られた。その結果は平成27年度中に学術論文として公表している。そして、(c)の事例分析から、巨額の減損損失の計上が債権者のモニタリングを通じて企業経営に影響を与えることを示す証拠を得た。この事例研究については現在論文としてまとめている最中である(平成28年度前半には学術雑誌に投稿予定である)。なお、(a)で得られた知見については現時点では十分な成果につながっていないものの、平成28年度の研究活動で活用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初想定していた成果が得られなかったため、平成27年度は研究計画の見直しに多くの時間を割くことになった。そのため研究活動の進捗状況としては、現時点において若干の遅れが生じている状態だといえる。しかしながら、研究計画の見直しの中で付随的な研究成果を得ることができたことに加えて、当初の研究の着眼点やリサーチ・デザインに関する課題点を発見し、研究を推進していくための新しい方向性を見出すことができている。したがって、現時点での研究活動の遅れは平成28年度において十分取り戻すことができるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、前年度に引き続き「固定資産の減損損失計上が企業経営に及ぼす直接的な影響についての分析」を行う。具体的には、次のように研究を進めていく予定である。(1)【研究実績の概要】でも述べた通り、上述の研究課題と関連して事例分析を行い論文をまとめている最中であるため、早い段階で論文の投稿を行う。(2)平成27年度に行ったリサーチ・デザイン等の見直しにしたがって、再度実証分析を行う。当初の計画で平成28年度中に実施を予定していた(3)固定資産の減損損失計上が経営者のインセンティブに及ぼす影響に関する分析は、(2)の結果を確認した上で行う予定である。以上の研究活動によって得られた成果は速やかに論文としてまとめ、学術誌へ投稿を行う。
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