本研究の目的は、2000年代のヨーロッパ福祉改革をEUの影響と加盟国国内党派性の視点から分析することである。具体的には、「右派政権の改革で、EUが影響している場合としていない場合があるのはなぜか」という問いを設定し、その答えとしてEUの影響の大小に着目した。その上で、加盟国の右派政権では、「EUの影響が大きい福祉政策領域」および「EUの影響が小さい福祉政策領域」で政府中心の政策決定を意味する「調整」型の過程を経た「フレキシブルな」改革が行われた、という仮説を提示した。本研究は、イタリア・第二次ベルルスコーニ中道右派政権の雇用、失業給付、年金改革の事例研究を行い、当該仮説の妥当性を明らかにした。
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