南極地方の地衣類より単離された細胞増殖抑制活性を示す環状デプシペプチドstereocalpin Aの構造決定と作用機序解析に向けた合成研究を行った。構成アミノ酸の立体化学はキラルアミノ酸分析により、ポリケチド部分の立体配置はNOE相関等を利用して決定されていた。しかしながら、過去のstereocalpin Aの合成研究によりその提唱構造の誤りが指摘されており、研究開始時点までに天然物の立体配置の決定は達成されていなかった。 まず、stereocalpin Aのポリケチド部分の全てのジアステレオマーを効率よく合成できる方法論を確立した。確率した合成経路に基づき、stereocalpin Aの8種類のジアステレオマーを合成した。このうち、C5位の立体化学が異なる異性体が天然物と同一のNMRスペクトルを示し、stereocalpin Aの構造修正とともに全合成を達成した。また、本天然物はポリケチド部分にエピメリ化に寄与しうるβ-ケトエステル部分を有しているが、合成した8種類の異性体において2-メチル基の立体反転は見られなかった。
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