散乱媒体を利用した3次元形状計測手法として,昨年度に引き続き隠蔽面の計測手法についての精度検証を行うとともに,劣化した画像の復元方法と,散乱媒体下における照度差ステレオを用いた物体法線推定の改良を行った. 隠蔽面の計測手法についてはシミュレーション実験を用いて2回反射までで計測可能な隠蔽面についての分析を行うとともに,実環境下での実験を行い,散乱光が計測可能なある程度の開口面があれば一定の精度で計測可能であることが確認できた. 劣化した画像の復元については,ピンぼけなどによる画像劣化に対する修復手法を散乱による劣化に対して適用し,その効果を検証した. また,散乱媒体下における照度差ステレオ法として,水中での形状計測を念頭に置いて単純な後方散乱による画像劣化だけでなく,物体の形状によって散乱現象が変化しうる前方散乱も考慮した手法について検討を行った.従来の照度差ステレオ法は散乱による劣化を考慮しておらず,水中など散乱現象が回避できない環境下では精度が低下することが知られている.これに対し,散乱現象による画像劣化をモデルに組み込んだ手法を開発した.散乱の度合いは散乱媒体の性質だけでなくカメラから物体までの距離により変化するが,提案手法ではその過程を散乱モデルとしてモデル化し,散乱の度合いと物体形状とを同時に推定することにより,散乱現象下でも正確な形状計測が可能となるような計測を実現した.計測精度についてはシミュレーションによる検証と共に,初年度に構築した水槽による実験装置を用いて検証を行い,従来手法を上回る計測精度が達成できていることを確認した.
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