研究課題/領域番号 |
15K00475
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研究機関 | 広島経済大学 |
研究代表者 |
土屋 祐子 広島経済大学, 経済学部, 准教授 (80458942)
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研究分担者 |
小川 明子 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (00351156)
坂田 邦子 東北大学, 情報科学研究科, 講師 (90376608)
林田 真心子 福岡女学院大学, 人文学部, 講師 (80624212)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 文化継承 / ワークショップ開発 / 主体 / デジタルストーリーテリング / メディアリテラシー / 音 / 減災 / 奄美大島 |
研究実績の概要 |
今年度は地域を語り継ぐメディア表現ワークショップのプログラム開発と実践に取り組んだ。第1に新たなプログラムとして、音に喚起される記憶から物語を立ち上げるリレー型デジタルストーリーテリングを考案し、福岡女学院大学と広島経済大学の学生と実践した。大学生たちは福岡と広島という異なる地域の間でそれぞれが拾い上げた「なつかしい音」を交換する中から、日々の暮らしに潜む記憶を掘り起こし、自らの経験や成長、家族の愛情などをふり返るデジタルストーリー動画を制作した。制作プロセスを通じて、自分が歩んできた歴史を相対化・可視化し、他者と共有した。 第2に前年度のプログラムをひな型にして地域文化をテーマとした応用ワークショップをデザインし、鹿児島県立大島北高校の聞き書きサークルと連携して実践した。聞き書きサークルでは、地元のお年寄りに奄美大島の風習や芸能、過去の暮らしについて話を聞き、冊子にまとめる活動に取り組んでおり、本実践では、聞き書き調査の中での高校生の気づきを自分のナレーションと写真で表すデジタルストーリー制作を行った。 3つ目はこれまで取り組んできたプログラムの継続である。前年度に引き続き、土砂災害の記憶の継承のために、他者の語りの応答として自己の語りを立ち上げるリレー型デジタルストーリーテリングを、復興交流館「モンドラゴン」の協力のもと、広島経済大学の学生たちが実施した。また、インドネシア火災噴火の記録のためのデジタル・ストーリーテリング実践にも取り組んだ。 いずれの実践も、語り継ぐテーマについての参加者の理解を深め、他人事から自分の問題へと認識の変容をもたらす「語る主体」を育む基本的なプログラムを生み出すことができた。 プログラムの開発内容や実践結果の報告は、国際学会で2回、国内学会1回、公開研究会で1回行った。また、研究会を2回開催し、研究関連の論文を3本、図書を1冊出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた地域を語り継ぐメディア表現ワークショップの開発は順調に進んだ。3つのプログラムを考案し、広島、福岡、奄美大島で大学生と高校生を対象に実践することができた。広島での実践については取り組んだ学生がコミュニティラジオ「FMハムスター」(広島市安佐南区)の番組で報告し、奄美大島での実践はケーブルテレビ「あまみテレビ」の取材を受け実践の模様が放送された。こうしたメディア連携により実践の成果を地域社会へアウトリーチすることができた。また、2つの国際学会と1つの国内学会に採択され、開発したプログラムと実践結果について学術発表する機会を得た。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は計画通り、地域を語り継ぐためのメディア表現ワークショップの検証に実践的、理論的に取り組んでいく。また、これまでの調査や実践をふまえ、地域を語り継ぐためのメディア・コミュニケーションのモデルを構築し、文化継承という視点からのメディアリテラシーや地域メディアのあり方を検討する。こうした得られた知見は国際学会や国内学会、論文で発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料整理やデータテープ起こしの作業、うち合わせ会場の使用に費用がかからなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
成果発表を充実させるための国内・海外の旅費として活用する。
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