研究課題/領域番号 |
15K00542
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山内 基弘 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (60437910)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 融合遺伝子 / CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
平成27年度の計画は融合遺伝子を生成するためのCRISPR/Cas9ベクターのデザインと構築、およびリアルタイムPCRによる融合遺伝子検出・定量の条件設定であったが、2つの計画変更を行った。1つ目は生成させる融合遺伝子の変更である。当初の計画ではETV6-NTRK3融合遺伝子およびRET-PTC1融合遺伝子を生成する予定であったが、複数のCRISPR/Cas9ベクターを構築し、細胞に導入したものの、融合遺伝子生成を確認できなかった。一方、肺癌や乳癌、大腸癌で見つかっているEML4-ALK融合遺伝子を生成させるため、EML4遺伝子およびALK遺伝子を切断するCRISPRベクターを構築し、ヒト肺癌細胞株A549に導入したところ、再現性よく融合遺伝子を検出することができた。そこでEML4-ALK融合遺伝子生成系を用いて「融合遺伝子生成頻度定量アッセイ」の樹立を目指すこととした。2つ目は定量PCRの方法の変更であり、リアルタイムPCRからデジタルPCRへ変更することとした。理由は、デジタルPCRは絶対定量法であるため、リアルタイムPCRのように検量線作成のための希釈系列を作る必要がなく、用意するサンプル数を大幅に削減でき、しかも操作が非常に簡便で、短時間に定量できるためである。EML4遺伝子およびALK遺伝子を切断するCRISPRベクターをA549細胞に導入し、24時間後にゲノムDNAを抽出し、用いるゲノムDNA量を変えてデジタルPCRを行ったところ、融合遺伝子生成量はゲノムDNA量に比例して増加するという結果が得られた。以上の検討から、デジタルPCRによるEML4-ALK融合遺伝子生成頻度の定量アッセイは樹立できたと考えられ、今後本アッセイを用いて融合遺伝子の生成・生成抑制にかかわる因子を同定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度の当初の計画は融合遺伝子を生成するためのCRISPR/Cas9ベクターのデザインと構築、およびリアルタイムPCRによる融合遺伝子検出・定量の条件設定であった。「研究実績の概要」欄に書いた通り、昨年度は生成させる融合遺伝子および融合遺伝子の定量法を当初の計画から変更した。このような変更があったものの、昨年度中に平成28年度に行う予定であったCRISPR/Cas9ベクターの細胞への導入条件の検討および融合遺伝子生成頻度の定量アッセイの樹立まで進むことができた。そのため進捗状況を「当初の計画以上に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に平成28年度までの計画がほぼ終了したので、今年度は平成29年度に行う予定であった、融合遺伝子の生成・生成抑制にかかわる因子同定のためのRNAiスクリーニングを行うこととする。スクリーニングの対象因子としては当初の計画通り、Classical Non-homologous end joining (NHEJ) 因子群、Alternative NHEJ因子群、Homologous recombination因子群、Single-strand annealing因子群、細胞周期チェックポイント因子群などの「DSB応答・修復関連因子群」およびクロマチンリモデリング因子群、ヒストン修飾因子群などの「クロマチン動態関連因子群」を予定している。さらに本スクリーニングで融合遺伝子の生成・生成抑制にかかわる因子が見つかったら、その因子が融合遺伝子の生成、すなわちDNA二本鎖切断の誤った修復を促進・抑制するメカニズムを生化学的、分子生物学的手法を用いて解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額6302円で購入する予定であった試薬の在庫が発注時になく、納品が次年度になる見込みであったため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に購入予定であった試薬を購入する計画である。
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