研究課題
融合遺伝子は、様々な造血器腫瘍や固形腫瘍で見つかっているが、その生成・生成抑制の分子機構は解明されていない。その解明のためには、ゲノム内の特定部位にDNA二本鎖切断(DSB)を導入し、融合遺伝子を人為的に生成させる実験系が必要である。そこで本研究では、ゲノム内のほぼ任意の部位にDSBを導入可能なCRISPR/Cas9システムを用いて癌関連融合遺伝子をヒト培養細胞に生成させ、その生成頻度を簡便に定量するアッセイを樹立するのを第一の目的とした。そしてこのアッセイを用いて癌関連融合遺伝子の生成・生成抑制にかかわる分子を同定することを第二の目的とした。平成27、28年度は、生成させる癌関連融合遺伝子の選択、CRISPR/Cas9ベクターのデザインと構築、融合遺伝子の検出や定量、細胞への導入条件の検討などの条件設定を行った。その結果、肺癌などでみられるEML4-ALK融合遺伝子をデジタルPCRで定量する方法がもっとも再現性が良いことがわかったので、この方法を融合遺伝子の定量アッセイとし、融合遺伝子の生成・生成抑制にかかわる分子を探索することとした。平成29年度はまず、主要なDSB修復因子であるDNA-PKcsとPARP1が融合遺伝子の生成頻度に影響を与えているかどうかを調べた。これらのタンパク質に対する特異的阻害剤を用いた検討の結果、DNA-PKcsの阻害剤を処理した細胞でのみ、EML4-ALK融合遺伝子の生成量がコントロールと比べ有意に減少することがわかった。DNA-PKcsはDSB修復経路のひとつ、Classical non-homologous end joining (c-NHEJ)の主要な因子であるため、c-NHEJおよび最近見つかったc-NHEJのサブ経路にかかわる因子群を中心に現在RNAiスクリーニングを実施中である。
すべて 2017
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Scientific Reports
巻: 7 ページ: 41812
10.1038/srep41812