幼児期から「生態学的自然観」を育てるために必要な具体的な保育環境と実践方法・内容を提案するという最終目的の下で、Indigenous educationをナショナルカリキュラムにおいても導入するニュージーランドとオーストラリアの保育現場における実地調査を行って先住民族の「生態学的自然観」をどのように保育現場において伝承しているのか、具体的な実践方法、教材、保護者や地域との連携の実態を把握した上で、同時に、日本の環境教育実践研究園においてビオトープを創出、維持、管理し、保育者や子どもにどのように生態学的自然観の醸成につながる経験が可能になるのかを観察し、最終段階として自然観の伝承の試験的導入を行い、「生態学的自然観」の育ちの可能性を探った。 最終年度となる今年は、ニュージーランドとオーストラリアの保育現場の観察にみられた要点(地域との日常的な連携、伝統的文化資源の活用)を環境教育実践研究園で活かす方策を探った。ビオトープの活用に関しては保育者の学びを深める研修を継続し、子どもが様々な要素からなる生態系を理解し、生態系への向かい方にみずから気づき、仲間に伝える姿も見られるようになった。海外の先住民文化からの学びの実践はそのまま日本の保育の場に導入できないが、伝統的文化資源の活用には可能性があることがわかった。そこで、稲作とそれにまつわる文化や二十四節気の活用などを試験的に取り入れたところ、子どもや保育者、保護者の理解が深まってくることも確認できた。ビオトープで日本特有の自然に日々触れあって愛着を感じ、そこにある生態系の要素に気づき、日本が伝統的に価値を認めてきた自然の姿やそれに密接につながる文化と結んでいくことで生態学的自然観を醸成し、結果として幼児期の持続可能性のための教育の実践へとつながっていくと考えられる。
|