研究課題/領域番号 |
15K00774
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研究機関 | 大阪市立自然史博物館 |
研究代表者 |
濱田 信夫 大阪市立自然史博物館, 学芸課, 外来研究員 (40270764)
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研究分担者 |
阿部 仁一郎 大阪市立環境科学研究所, その他部局等, 研究副主幹 (10321936)
岩前 篤 近畿大学, 建築学部, 教授 (90368283)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 好温性カビ / 室内塵 / エアコン / 室内環境 |
研究実績の概要 |
多くの人が長時間過ごす室内環境中に生育するカビ、とりわけ人の健康に影響を及ぼすと思われる40℃でも生育する高温性カビの生態を明らかにする調査に取り組んでいる。今年度は、エアコンの内部のどの部分にカビ汚染が多いかを明らかにした。25℃で培養した場合、内部の各部分ごとでカビ数に桁違いの差が見られた。最もカビが多いのは送風ファンで、25℃培養では平均数が3,365/cm2だった。続いて多いのは、吹き出し口の平均860/cm2だった。エアコンの各部分のカビ数を住宅内の水周りと比べると、浴室の排水口では平均3,190/cm2、浴室の天井では469/cm2で、送風ファンのカビ数は、水周りと比較しても多かった。 送風ファンや吹き出し口を観察すると、カビ汚染の多いファンの羽根には、ホコリに混じったカビの菌糸が多数認められた。また、多くの暗色のカビが、吹き出し口の表面などに斑点状に直接付着し生育していた。エアコンで結露が最も多く発生するのは熱交換器であるが、熱交換器に付着した結露水は、溜まらぬようにドレインパンから排水されるために、熱交換器表面のカビ数は比較的少ないと考えられる。 最も好温性カビが多かったのは、一般カビと同様に、送風ファンの表面で平均3.65/cm2だった。なお、そのカビ数は、一般カビの約1/1000であった。また、A. fumigatusはフィルターのホコリだけではなく、送風ファンや吹き出し口、熱交換器の部分からも分離された。ゆえに、恒温性カビはエアコンの様々な部分に生育していると考えてよいだろう。 エアコン内部をクリーニングすることによって、カビの汚染の多い送風ファンや吹き出し口において、好温性カビは検出限界以下に、一般カビは数100分の1以下に減少した。さらに、クリーニングは内部のカビ汚染を一時的に除去するだけでない。その洗浄効果は、1年間以上継続することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内環境中の、とりわけ人の健康に影響を及ぼすと思われる40℃でも生育する高温性カビの生態を明らかにする調査を行った。最も好温性カビが多かったのは、一般カビと同様に、送風ファンの表面で平均3.65/cm2だった。なお、そのカビ数は、一般カビの約1/1000であった。また、好温性カビの代表であり、日和見感染症であるアスペルギルス症の原因菌であるA. fumigatusはフィルターのホコリだけではなく、送風ファンや吹き出し口、熱交換器の部分からも分離された。ゆえに、好温性カビはエアコンの様々な部分に生育していると考えてよいだろう。 そのような汚染に対する対処法として、エアコン内部をクリーニングすることによって、カビの汚染の多い送風ファンや吹き出し口において、好温性カビは検出限界以下に、一般カビは数100分の1以下に減少した。さらに、クリーニングは内部のカビ汚染を一時的に除去するだけでない。その洗浄効果は、1年間以上継続することが分かった。なおこのような対処法によって、好温性カビも検出限界以下に抑えられることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を踏まえ、その対策についての検討に入っていきたい。エアコンのカビが少なくなる使用法について実際に即して提言していく予定である。とりわけ、エアコンの使用を避けて熱中症になる高齢者の事例を多く見たとき、エアコンの高齢者の生活にとっての有効性は明らかである。また、好温性カビ汚染と住宅の気密性や省エネ構造との関係について、モデル住宅によって検証実験を行う予定である。とりわけ好温性カビが多く検出された住宅のエアコンに注目して、カビ汚染を助長させる温湿度要因を解明したい。室内にある電化製品の中で、テレビや照明器具などの機器によって高温になるホットスポットなどの局地的なカビ汚染についても明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年使用予定の培地及びシャーレの購入が、実験手順の変更で次年度になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度には、培地及びシャーレの購入を行う予定である
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