オリーブ葉の粉末を飼料に混ぜて飼育したオリーブハマチは変色しにくい肉質でさっぱりした味わいである。本研究ではその理由を解明することを目的とした。オリーブ葉にはオレウロペイン(OLP)などオリーブ特有のポリフェノール(PP)が多量に含まれることから、PPでも特にOLPに着目して生化学的方法で解析を行った。ハマチの反転腸管を使ってOLPの腸管透過性とOLPの体内動態を調べたところ、OLPは代謝を受けずに腸管から吸収されたが、オリーブ葉粉末を給餌した(オリーブ区)のハマチの背側普通筋、肝臓、血漿にはOLPやその代謝物は検出されなかった。しかし、血漿の抗酸化性は、オリーブ葉粉末を給餌しなかった(対照区)のハマチと比べて約4倍高かった。ハマチとマダイの背側普通筋のタンパク質量を調べたところ、両魚種ともに共通してオリーブ区の方が対照区より筋肉中の酸可溶性コラーゲン量が有意に多かった。顕微鏡観察でも、オリーブ区の方が筋肉中のコラーゲン量が多いことが示された。ハマチ背側普通筋の歯ごたえと硬さを破断強度を使って調べたところ、オリーブ区ハマチの方が歯ごたえがよいこと、また4℃に3日間保存しても軟化しにくいことが分かった。また、コラーゲン産生細胞である線維芽細胞をOLPやPPを多量に含むオリーブ抽出液で処理したところコラーゲン産生量が増えた。 以上の結果から、オリーブ葉粉末を食べさせることでハマチとマダイの筋肉中のコラーゲン量が増えることが明らかとなった。このように筋肉のコラーゲンが増えたことが、オリーブハマチ刺身の歯ごたえをよくし、保存中に起こる軟化を抑制したものと考えられる。本研究の成果は、オリーブ葉粉末の給餌が養殖魚の肉質改善につながることを科学的に示したもので、今後の養殖魚の高品質化に有用な情報といえる。
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