R. ornithinolytica (RO)自身にとってヒスタミン産生は何の意味があるのかについて考察した。ROにおけるヒスタミン産生性の生理学的意義について検討するために、mariner Tn挿入変異株ライブラリーを用いた大規模スクリーニングにより、ヒスタミンの産生制御に関わる遺伝子群をさらに探索したところ、ヒスタミン産生能が著しく減弱した株としてrecA-株を同定した。そこで、DNA damageとヒスタミン産生性との関わりを調べるために、UV-Cとmitomycin Cに対する感受性試験を野生株とhistidine decarboxylase (hdc)欠損株について行ったが、UVおよびmitomycin Cに対する感受性は両株間で差は認められなかった。また、野生株およびhdc破壊株について、1%ヒスチジン存在下におけるH2O2に対する耐性を調べたところ、hdc破壊株は野生株と比較して著しくH2O2感受性であった。さらに、野生株を対数増殖期中期まで培養後、1mM H2O2刺激を加えるとhdc遺伝子の発現誘導が認められた。過剰の細胞内外ヒスチジンは、H2O2のDNA傷害作用を増強することが報告されている。したがってROにおけるヒスタミン産生は、マグロ・サバ等のhistidine-richな環境中においてヒスチジンを除去することでH2O2等の酸素ストレスを回避するためのシステムとして機能していると考えられた。 また、RO由来によるヒスタミン食中毒を抑制制御するための検討を行った。これまでの我々が得た所見により、CRPが関与するカタボライト抑制機構によってROにおけるヒスタミンの産生が制御されている。そこで培地に0.1-1%グルコースを添加することによってヒスタミンの産生を完全に抑制することができた。
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