研究課題
本研究は、胎児期から乳幼児期に至る子どもとその両親を対象に、医師、管理栄養士、保健師がチームを組んで、適塩と和食の推進により循環器疾患予防と健康増進を目的に、栄養アセスメント、計画立案、評価の公衆栄養マネジメントを5年間継続して行うクラスター割り付け比較対照試験である。研究初年度である平成27年度は、研究計画を倫理委員会に申請し、許可を得た。【対象】京都府内2市(南丹市、長岡京市)2町(京丹波町、精華町)に協力を依頼し、調査方法等について個別に協議を重ねた。その結果、京丹波町と南丹市は介入地域、精華町と長岡京市は対照地域として研究協力が得られた。平成27年10月より6カ月間の予定で、介入地域の乳児前期(4ヶ月)健診対象児の父親と母親を対象に研究を開始した。【方法】乳児前期健診時に起床後第1尿を提出させ、ナトリウム(Na:mEq/l)、カリウム(K:mEq/l)、クレアチニン(mg/dl)を測定し、田中の計算式により推定食塩摂取量、推定カリウム摂取量、尿中Na/K(ナトカリ比)を算出した。尿検査は、検査会社に委託して炎光法により測定を行った。また、身体特性2項目、食品摂取頻度8項目の自記式食習慣調査を実施した。【結果】南丹市では51人、京丹波町では55人の研究協力者を得た。これらの協力者の尿検査の結果から、塩分と野菜類等の摂取状況を評価し、助言をつけて個別返却した。今後は、ベースライン調査を各市町において、6カ月間継続し、以後の乳幼児健診において、母親を対象とした健康教育を実施する予定である。対照地域である1市1町においては、平成28年度からの実施の許可が得られた。
3: やや遅れている
研究助成の採択結果を受け研究計画の審査を大学倫理委員会に申請したが、開催が8月下旬となり研究開始が遅れた。倫理委員会の承認を得て、2市2町の行政に依頼、担当者との協議を重ね、首長に対する依頼、決裁、住民への周知に予想以上の時間を要した。しかし、予定した地域の研究協力は予定通り得られている。
介入地域のベースライン調査を継続するとともに、対照地域の精華町、長岡京市において調査を開始し、6カ月間継続する。介入地域と対照地域のベースライン調査結果より、推定食塩摂取量と食事パターンとの横断的関連分析を行う。介入地域においては、乳児後期健診、1歳半健診において、地域の実情に応じて公衆栄養プログラムを保健所、保健センター(保健師、管理栄養士)、管理栄養士養成校の教員、学生が協力して実施する。対照地域においては観察のみを行う。両群ともに3年後の3歳半健診において、両親について同様の調査と、児の尿検査を実施し、第一尿による推定食塩摂取量とナトカリ比の測定とその結果の個人と集団への還元を行う。本研究は、妊婦とその夫も研究対象として、胎児期からの親子による健康づくりを計画しているが、行政における妊婦教室の参加者が少なく、地域全体の対策とならないために、現時点で、妊婦(胎児)を対象にできていない。介入地域、対照地域ともに、追跡期間に研究協力者が妊娠された場合を妊婦として登録し、研究協力を依頼して、妊娠期間における健康教育を実施する。対照地域においては研究期間修了後に健康教育を実施する。【教育内容】・家族で共食することにより、野菜類、果実類、豆・豆製品類、芋類、海藻類等の食品数と摂取量を増加させる。・食事バランス(主食・主菜・副菜)をそろえ、地場産物や季節の野菜・果物を取り入れた適塩和食の献立を紹介する。・汁物の塩分濃度をベースライン値から0.1ポイント低下させること、・野菜、芋、きのこ、海藻等から3種類の実の入ったみそ汁を推奨する。・汁物の塩分濃度測定、食品表示の見方など、家庭で応用可能な実践的内容とし、対象者の理解を深めるよう意見交換の時間を設ける。【地域全体対策】適塩と野菜・果物類等の摂取を推進するポスター、リーフレットを作成し、スーパーマーケット、保育所で配布する。
研究協力を依頼した市町と個別に協議を進める中で、介入地域の1市1町については計画通り平成27年度から調査を開始することができた.しかし、対照地域の1市1町については、調査開始が平成28年度にずれ込んだ。その結果、平成27年3月は、データの収集中であり、統計解析には至らず、解析ソフト(SPSS)の購入が平成28年4月となった。
生じた次年度使用額は、ベースライン調査に必要な解析ソフト(SPSS)の購入を予定しており、当初の計画に則り適切に使用する。
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