研究課題/領域番号 |
15K00830
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
東 あかね 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (40173132)
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研究分担者 |
桝本 妙子 同志社女子大学, 看護学部, 教授 (50290218)
北岡 かおり 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 講師 (60709020)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クラスター割付比較対照試験 / 公衆栄養マネジメント / 乳幼児健診 / 子ども / 両親 / 主観的暮らし向き |
研究実績の概要 |
本研究は適塩と和食の推進により、地域の若年期からの循環器疾患予防と健康増進を目指すものである。 介入地域の1市では、平成29年6月から平成30年3月の1歳8カ月児健診において、大学と市が共同で作成した食育資料による個別指導を、市の管理栄養士が実施した。また、健診対象児の保護者に対して、乳児前期健診と同様の項目に新たな質問を加えた食生活調査を実施した。子育て世代における食物摂取頻度および減塩意識の食育前後の変化を明らかにすること、また、父母別の暮らし向きと①食物摂取頻度、減塩意識、②身に付けたい食知識(以下、食知識)、③健康情報入手源(以下、情報入手源)の関連を把握し、地域における健康格差の縮小の一助とすることを目的とした。 平成29年6~10月までの追跡調査の結果、減塩意識が全体で有意に上昇し、実施した減塩行動として調味料を減らす、野菜を多くとる割合が高かった。これは、これらの行動が実施しやすいことを示唆していると考えられる。食の情報源は男女で差がみられた。父親はテレビに偏るが、母親は料理の作り手となる場合が多いので料理アプリが最多で、雑誌や本からも父親の2倍の割合で情報を得ていた。子育て世代が多く使い、生活の中で利用しやすい手段を食育の介入源とすることが重要であると考える。 暮らし向きとの関連は、父親では、全体的に食に対する関心が低く、主観的暮らし向きと食生活の関連は少なかったことから、全体への支援の必要性が示唆された。一方、母親では、主観的暮らし向きと汁物、漬物、野菜摂取頻度、減塩意識に関連を認めたことから、経済的要因を視野に入れた働きかけと支援の必要性が示唆された。主観的暮らし向きと食生活の関連には性差があり、健診の場を利用した食教育の有用性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乳児前期健診受診児の保護者を対象としたベースライン調査が、介入地域1市1町と対照地域1町で計画通りに終了し、推定食塩摂取量と食事パターンとの横断的分析を実施することができた。また、地域全体への対策として、適塩和食を推進するカレンダーを小児科医院や歯科、保育所、幼稚園に配布し掲示を依頼した。 介入地域での乳児後期健診での介入(食育カレンダー配布と尿中塩分結果展示、食育資料を用いた個別指導)が終了したことを受け、1歳8カ月児健診では、その食育効果をアンケート調査により確認することができた。また、地域において若年期への健康増進の取組を効果的に進めていく資料として、暮らし向きとの関連について調査することができた。
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今後の研究の推進方策 |
介入地域において、対象となる児の2歳5カ月児健診が始まる。1歳8カ月児健診で得られた食育前後の食物摂取頻度と減塩意識の結果を保護者や関係者に情報提供する。また、料理の作り手である母親に、調味料の使用量を意識させることを目的に計量ミニスプーン(1ml)を配布し、市の管理栄養士が個別指導を実施する計画である。保健所、保健センター(保健師、管理栄養士)、管理栄養士養成校の教員、学生が協力してプログラムの企画、推進にあたる。対照群については、観察のみを行う。両群ともに3歳半健診において、両親について同様の調査と、児の尿検査を実施し、第一尿による推定食塩摂取量とナトカリ比の測定とその結果の個人と集団への還元を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
3歳半健診では両親の調査と児の尿検査を実施する予定である。当初の計画より、調査対象者が増えたため、最終年度には検査費用が計画よりも増加することが見込まれる。最終年度に研究費を繰越すことで計画的に適切に使用する。
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