研究課題/領域番号 |
15K00860
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
上硲 俊法 近畿大学, 医学部附属病院, 教授 (20233934)
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研究分担者 |
田中 裕滋 近畿大学, 医学部附属病院, 講師 (00465650)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 後成的影響 / 脂肪酸代謝 / 胆汁酸代謝 |
研究実績の概要 |
(目的)胎生期に暴露された栄養環境がいくつかの代謝関連遺伝子のエピジェネティックス制御に影響を及ぼすことが報告されている。平成27年度には母親世代が高脂肪食の場合、成長期仔マウスが標準飼料食を摂取した場合も肝臓への脂肪酸吸収の亢進と肝への脂肪沈着が増加する事を明らかとした。そこで平成28年度には仔マウスに標準食に加え高脂肪食を投与した場合に如何なる後成的影響を引き起こすかを解明する事を目的に以下の実験を行った。 (方法)母親マウス(F0世代)を生後5週齢から標準飼料(7%大豆油)群、高脂肪食(7%大豆油+16%ラード)群に分け(F0世代が標準食した場合C群, 高脂肪食摂取ではH群)、C群、H群各々から生まれた雌雄仔マウス(F1世代)は3週の授乳の後8週間標準飼料で飼育し、11週齢時にさらに標準食を続ける群と高脂肪食摂取をする群に分けた(雄雌のF1世代をそれぞれCC群、CH群、HC群、HH群とする)。15週齢まで飼育した後F1世代の体重、肝重量、血清脂質、肝臓脂質濃度を測定し、肝組織と脂質・胆汁酸代謝関連遺伝子産物発現を検討した。 (結果)①F1世代の雌雄とも最終体重はCH群がCC群に比し、またHC群がHH群に比し重かったが、CC群とHC群間、CH群とHH群間には体重増加に有意な差を認めなかった。肝重量も同様の傾向にあった。②肝臓中肝TG濃度は雄ではCH群がCC群に比し、HC群がHH群に比して高かったが、雌では各群間にて肝TG濃度に差を認めなかった。③脂質・胆汁酸代謝関連遺伝子産物:雌性マウスHH群においてはHC群やCH群に比して肝臓の脂肪酸代謝に関与するCD36, Acox1やコレステロール合成酵素HMG-CoAR、胆汁酸代謝関連のCyp7a1, Oatp1b2の発現が高かったが、雄マウスでは各群に有意差はなかった。 (結論)これらの所見から母親世代の脂肪摂取の違いが仔マウスの脂質・胆汁酸代謝に影響を及ぼす上で性差が関与する事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の経過から母親世代の脂肪摂取の違いが肝の脂質代謝および胆汁酸代謝に影響を及ぼす可能性がある事が示唆された。雌マウスにおいては雄と異なる遺伝子産物発現様式が認められたため、今後性差の比較のための追加の実験を計画している。当初予定されていた研究は概ね順調に進行していると考える。ただし、今までの検討では15週齢のF1マウスでの検討では小腸における脂質吸収および胆汁酸代謝に関与する遺伝子発現は各群間において有意な差は見いだせなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年、28年度両年の成果を踏まえるとF0世代の脂肪摂取量の違いがF1世代マウスの脂質代謝、胆汁酸代謝に影響を及ぼす事が示唆している。さらにこれらの遺伝子発現の変化が雌マウスにおいて大きな差がみられた。これらの所見から平成29年度においては、F0世代の食餌中の脂質組成がF1世代への長期的影響を検索する事を目的に以下の実験を行う。 同様の食餌環境でF0およびF1世代を飼育した後、F1世代を標準飼料投与もしくは高脂肪食投与する群に分け、長期間(48週間)飼育し同様の検索を行う。F0世代の食餌のF1世代への長期経過を観察する。実験群は、標準飼料投与もしくは高脂肪食投与する群((F1世代が標準食した場合C群, 高脂肪食摂取ではH群)に分け、飼育する (F1世代は雌雄各々CC, CH, HC, HHの8群に分ける)。48週齢まで飼育した後F1世代の体重、肝重量、血清脂質、肝臓脂質濃度を測定し、肝および小腸の脂質・胆汁酸代謝関連遺伝子産物発現を検討する。 この実験によりF0世代の食餌の影響に加えF1世代の食餌脂質組成の差が脂質代謝にいかなる影響を及ぼすか、これらの影響が性の影響を受けるかを、長期的に観察する事になる。なおこの実験群の飼育はすでに開始しており平成29年度中の結果報告は可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度購入試薬の残余がありにより、試薬の購入時期のずれが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
各種アッセイは実験進行により、定期的に行っており、今年度に関しては購入時期の修正はできている。
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