研究実績の概要 |
(背景と目的)肥満やメタボリック症候群に胎児期に暴露された栄養環境がエピジェネティックスに発症に関与すると考えられている。本研究では、平成27、28年度に、①成長期仔マウスは標準飼料食を摂取した場合でも、母世代が高脂肪食の場合、肝臓への脂肪酸吸収の亢進と肝への脂肪沈着が増加し、②母世代の脂肪摂取の違いが仔マウスの脂質・胆汁酸代謝に影響を及ぼす上で性差が関与する事、を明らかとした。そこで平成29年度には母親マウス(F0世代)の食餌中の脂質組成が母親マウス(F0世代)への長期的影響を検索した。 (方法)F0世代を生後5週齢から標準飼料群、高脂肪食群に分け(F0世代が標準食:C群, 高脂肪食:H群)、C群、H群各々から生まれたF1世代は3週の授乳の後8週間標準飼料で飼育し、11週齢時にさらに標準食を続ける群と高脂肪食摂取をする群に分けた(雄雌のF1世代はそれぞれCC群、CH群、HC群、HH群となる)。長期間(48週間)飼育し、F0世代の食餌のF1世代への長期経過を観察した。48週齢まで飼育した後F1世代の体重、肝重量、血清脂質、肝臓脂質濃度を測定し、肝および小腸の脂質・胆汁酸代謝関連遺伝子産物発現を検討した。 (結果)①長期間の飼育においてもF1世代の雌雄ともF0世代の食餌にかかわらず最終体重がH群で重く、CC群とHC群間、CH群とHH群間には体重増加率に差を認めなかった。②脂質・胆汁酸代謝関連遺伝子産物:雄性、雌性マウスとも短期間における検討でみられた、CC, CH, HC, HH群の間の脂肪酸代謝、コレステロール合成酵素や胆汁酸代謝関連遺伝子産物発現に有意差はなかった。 (結論)母親世代の脂肪摂取の違いは仔マウスの脂質・胆汁酸代謝に短期的影響は遺伝子産物レベルで差はあったが、長期飼育では影響が小さくなり、成長後の栄養暴露の影響は胎内での栄養暴露上回る事が示唆された。
|