研究課題/領域番号 |
15K00954
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
矢治 健太郎 国立天文台, 太陽観測科学プロジェクト, 専門研究職員 (10399305)
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研究分担者 |
大山 政光 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80332716)
大朝 由美子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10397820)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 太陽 / 太陽黒点 / 太陽活動 / データベース / 授業実践 / 水星太陽面通過 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国立天文台に長期間蓄積された太陽活動データベースを基盤として、大学・高校・中学校で活用・実践可能な物理教育プログラムを開発・実践・評価することである。 研究代表者・研究分担者2名とは、直接あるいはメールベースで2016年度の研究打合せを進めた。矢治は8月に国立天文台が主催した「理科教員のための天文セミナー」で基調講演を行ない、太陽観測データの活用を紹介した。11月には東京都内の中学校で太陽画像を活用した理科授業を行った。昨年5月9日に起きた水星太陽面通過がひので衛星の観測データを用いて、1天文単位を求める教材を開発し、天体画像教育利用ワークショップで実習を行った。実習の結果、いくつかの改善点が見られたので今後改良する。大朝は9-10月に埼玉大学教育学部の講義「地学演習」の中で、太陽活動データベースを使った実習や、白色光やHα、電波による太陽観察の授業を行なった。以上の講義や授業では、事前事後にアンケートを実施し、受講者の太陽に関する基礎知識の変化や理解度について調査した。調査結果の一部については天文学会で発表している。埼玉大学では、教育学部生を中心に Hα線・ CaK線・可視光による太陽観測を行っており、観測画像はホームページ上で公開している。大山は、太陽観測画像をもとに教育用動画を作成し、小学校3校、中学校1校ののべ5回の授業実践を行った。これらの授業を通し、作成した動画が子どもにとって興味・関心の高まる内容であることがわかった。 以上の研究成果については、国内の学会や研究会で10件、国際会議でも3件の発表を行った。5月にコロンビア、8月にノルウェーの会議に出席し、太陽教材に関する口頭発表を行ない、議論や情報収集に務めた。2-3月には、来日したPedro Russo, Thillina Heenatigala(ライデン大学)らと議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国立天文台太陽観測所のデータベースや埼玉大学の太陽観測データを元に開発した教材を、埼玉大学での講義や東京都内の中学校での理科授業、教員向けセミナーで実践を果たしたことは自己評価できる。実践に当たっては、事後アンケートなどを実施し、その分析結果の一部は天文学会で発表した。水星太陽面通過の観測データを用いた教材開発も実現した。 海外での太陽教育事情についても、コロンビアでの国際会議、IAU関係者や、 2-3月に来日したライデン大学関係者と議論や情報交換することができた。 以上から、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している。」と自己評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、国立天文台に長期間蓄積された太陽活動データベースを基盤として、大学・高校・中学校で活用・実践可能な物理教育プログラムを開発・実践・評価を継続する。特に本研究課題の最終年度であり、その総括を行なう。 国立天文台太陽観測科学プロジェクトでは、現在、白色光・CaK線の高空間分解画像を公開しており、その公開データを用いた教材開発も進める。また、昨年開発した、水星太陽面通過の観測データを用いた教材の問題点を改良し、高校・大学で実習を行なう。開発した教材については、ウェブやクラウドを用いた公開を目指す。実践・実習では、事後アンケートなどの追跡調査を実施し、結果は論文をまとめる。7-8月には、数年継続している、太陽観測衛星ひのでと中高生との同時観測キャンペーンを行ない、その教育効果を評価する。 以上の研究結果は、国内外の天文教育普及関係の会議・集会に出席、研究成果を発表する。海外では太陽教材事情の情報収集に務める。7月にオランダ・ユトレヒトで行われる天文教育の国際会議「International Symposium on Education in Astronomy and Astrobiology (ISE2A)」に出席し、発表する。この会議のあと、ライデン大学で天文教育・教材に関する議論を行なう予定であり、太陽を題材とした理科教育事情についての情報収集を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の発表を予定していた国際会議が中止となり、助成金の使用を完了することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果発表のため、国内外の学会・研究会に出席する。太陽観測装置の整備、データ解析や分析のための計算機器の整備のために使用する。
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備考 |
研究成果を社会・国民に発信する方法として、以下の講演、執筆活動を行った。 矢治は、科学技術館・科学ライブショー「ユニバース」における国立天文台で観測した最新太陽画像の紹介、一般向け講演2件、国立天文台太陽観測所の「毎月の太陽活動」の記事執筆を行った。大山は、小中学校5件で講演を行った。
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