地形-植生関係の解明は植生地理学や地生態学での主要な研究テーマである.本研究では,植生帯境界域における地形と対応した植生分布を明らかにするため,優占種の更新動態様式や森林動態について調査した.利尻島では表層物質の差異が森林動態に影響しており,仙台・鈎取山国有林では更新動態様式が異なることで林冠層に多種が共存することを示した.また,函南原生林では標高に沿った優占種の生長特性の変化が植生帯境界の形成に重要な役割を果たしていることが示唆された.これらのように,地形を背景とした立地条件は優占種の維持更新様式に影響しており,地形-植生関係の解明のためには植生の成立過程を考慮する必要があると考えられた.
|