研究課題/領域番号 |
15K01572
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松岡 宏高 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (10367914)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | スポーツイベント / 地域社会 / 効果測定 |
研究実績の概要 |
本研究はスポーツイベントの社会的影響の測定およびその検討を試みるものである。具体的には、スポーツ関連要因と社会的要因について測定し、イベントの前後でその変化を確認することを目的とした。 しかしながら、本研究は追加承認されたため計画に比べて遅れて開始された。そのため単発開催の大規模イベントを対象とした調査を推進するために十分な時間がなく、比較的小規模なイベントとしてのプロスポーツを対象としてデータ収集を行うこととした。その対象には、平成24~26年度に実施した「見るスポーツの社会的価値の測定(基盤研究C)」におけるインターネット調査の回答者を用いた。この調査の対象者は平成26年に新たにJクラブが誕生した地域の住民であり、開幕前に行った調査の回答者は1,878名であった。1年目シーズン終了後調査では1,208名が回答したが、この回答者が今回の調査対象者となった。 スポーツの社会的影響を測定する尺度には、social capital、collective identity、well-being、そしてhuman capitalの4要因12項目を用いた。確認的因子分析を行った結果、このモデルがデータに適合していることが確認された。 追跡調査を行い、収集したデータは886部であった。このデータを事前データとマッチングさせ、スポーツの社会的影響の時系列分析を行った結果、social capitalにおいては変化がなかった。一方で他3要因においては統計的に有意な測定値の低下がみられた。同様の分析を、地元チームへの関与の高さによる群ごとに行った結果、低関与群では全4因子で有意な測定値の低下が見られたが、高群においては変化がなかった。開幕前にチームの社会的影響に対する認識が一時的に高まった可能性を考慮すると、高関与群においてその低下がなかったことは、何らかの社会的影響が働いたと考えることも可能であろう。ただ、簡単に結論付けることはできず、より詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
科学研究費助成金による本研究プロジェクトは、平成27年10月末に追加承認された。そのため当該年度においては当初の計画通りの研究を遂行することができなかった。限られた時間の中で、平成24年度~26年度に実施した「見るスポーツの社会的価値の測定(科学研究費助成金・基盤研究(C)(研究代表者:松岡宏高))」においてインターネットによる質問紙調査を実施した対象者に追跡調査を行い、プロスポーツチームによる日常的なスポーツイベントが地域社会に与える時系列的な影響の検討を試みた。ただし、計画段階での本研究の主目的である単体で開催される比較的規模が大きなスポーツイベントの影響を検討するには至っていない。これは次年度以降の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
既述のように、本研究プロジェクトは年度途中に追加承認されたため、当該年度においては当初の計画通りの研究を遂行することができなかった。したがって、今後2年間においては次のような計画で研究を推進する。スポーツイベントの社会的影響を測定するために、まず、平成28年度から29年度にかけて開催される複数の(2つの予定)イベントを選定する。それらのイベントの開催前後において、そのイベントへの関与が高い者(高関与群:競技者・観戦者・運営スタッフ)および低い者(低関与群:地域住民)を対象に質問紙調査を実施する。調査方法については、高関与群には訪問留め置き法と郵送法を用い、低関与群にはインターネット調査を用いる。測定する変数は、スポーツ要因と社会的要因として、それらの変化を確認することによってスポーツイベントの社会的影響を検討するために、イベント開催前後で継続したデータ収集を行う。その後、イベント開催前後での比較分析を行い、その影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
科学研究費助成金による本研究プロジェクトは、平成27年10月末に追加承認された。そのため当該年度においては当初の計画通りの研究を遂行することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究目的のために必要な調査対象の検討および調査準備のための研究旅費として使用する。
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