研究課題/領域番号 |
15K01572
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松岡 宏高 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (10367914)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | スポーツイベント / 社会的影響 |
研究実績の概要 |
本研究はスポーツイベントの開催によって生じる地域社会への影響の測定を試みるものである。その影響を多様な要素を用いて検討した先行研究を再検討する中で、影響をポジティブとネガティブに二分する必要性を確認した。ポジティブ要素には、経済活性、文化的経験、イメージ向上、地域プライド、スポーツへの関心が挙げられ、ネガティブ要素には、交通・日常生活の妨害、安全面のリスク、浪費が挙げられた(Balduck et al., 2011; Kim et al., 2015など)。これらの要素に基づいて、ポジティブ要素17項目とネガティブ要素13項目の計30項目を設定した。 測定尺度の検討を行うため、2017年冬季アジア札幌大会を対象として、札幌市民に対してインターネット調査を通して大会の地域社会への影響についての回答を求めた。回答者の条件としては、札幌市在住であること、および大会を認知していることとした。予備調査を通して確認した条件に合う828名より本調査の回答を得た。その中で、不適切な回答が含まれる者、および当該大会に関する情報をいずれの媒体からも入手していない者を除く639名を分析対象とした。尺度モデルを検証するために確認的因子分析を行い、構成概念妥当性の検討を行った。まず、因子負荷量は1項目を除く29項目が.60以上、27項目が.70以上であり、平均分散抽出(AVE)が全8因子において.50以上であったため、収束的妥当性が確認できた。弁別的妥当性については、各要因のAVEと因子間相関の二乗を比較して確認した。28の相関係数の内、4つがそのいずれかのAVEを上回り、弁別的妥当性は十分には確認できなかった。しかし、概ね基準を満たす適合度が確認され(χ2/df = 4.46、CFI = .918、TLI = .905、RMSEA = .074)、モデルがデータに適合したと判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スポーツイベントの社会的影響という概念を測定する尺度の検討を行うために必要な比較的大規模なイベントが札幌という政令指定都市で開催されたため、適切なデータの収集が可能となり、分析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究活動においては、スポーツイベントの社会的影響の測定尺度の妥当性が十分に確認できなかった。したがって、各項目の再検討を統計解析および先行研究のレビューによって行い、まずは改良版測定尺度を設定する。その上で、新たなデータを収集し、再び確認的因子分析を用いて尺度モデルの妥当性の確認を行う。対象とするスポーツイベントには、2020年東京オリンピック・パラリンピックを用いる。開催3年前ではあるが、その認知度は相当高いため、すべての回答者が設問を十分に理解した上で適切に回答することが可能であると考えられる。なお、影響については、「生じると考えられる影響」について回答者の認識を問うこととする。対象は東京都民1,500名を予定している。さらに、調査対象者の性別、年齢層、スポーツ実施経験、実施状況、オリンピックに対する態度などの変数を用いてセグメント化し、スポーツイベントの影響に対する認識についての比較分析をセグメント間で行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
札幌市民を対象としたインターネット調査の費用、および軽井沢マラソンでの参加者調査の謝金が計画よりも少なく、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に計画している調査の規模を拡大し、より多くの項目でより多くのサンプルを用いた調査を行う。また、調査結果の分析を早く進め、研究成果の報告を国内外の学術学会において発表することを計画し、その旅費に充当する。
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