研究実績の概要 |
血中microRNA (miRNA) が生活習慣病のバイオマーカーとなり得るか検討した。 玄米と白米のランダム化比較試験を行った血清からmiRNAを抽出し、定量的RT-PCR法にて発現を検討した。米群、白米群、各10名のプール血清による比較では、12週間の介入により、51のmiRNAの発現に両群で有意な発現変化が認められた。そのうち、重要と思われる5つのmiRNAについて、個別に血中発現量を定量した。また、体重や腹囲、血圧、糖脂質代謝との関連について検討した。 3つのmiRNAについては、発現量が少ないために、検討はできなかった。miR-29a-3pについては、両群の12週後の発現に有意差は認めなかった。miR-92a-3pについては、白米群に比べて玄米群において12週後の発現が有意に低下していた。玄米群白米群に比べて有意な体重減少が認められたが、miR-92a-3pについては、体重、BMI、腹囲との間に有意な相関はなかった。また、収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖、インスリン血、HOMA-IR、総コレステロール、トリグリセライド、LDL-C、HDL-C、AST、ALT、γGTP、尿酸値のいずれもmiR-92a-3pと有意な相関は認めなかった。一方、miR-29a-3pの変化量は、IRI, HOMA-IR, LDL-Cの変化量と有意な正の相関を認めた。 血中miR-92a-3p発現量と褐色脂肪組織の活性化には負の関連が認められるが、今回の検討では、玄米群で体重減少が認められたにもかかわらずmiR-92a-3pの発現は有意に低下しており、玄米による体重減少効果は褐色脂肪組織の活性化を介したものではないと考えられた。一方、miR-29a-3pの発現増加は肝臓における脂肪合成や骨格筋でのインスリン抵抗性と関連していることが報告されており、これに合致する所見と考えられた。
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