研究課題
抗メタボリックホルモンであるアディポネクチンの血中濃度と疾患発症との間には負の相関関係があるとの報告が多数なされている。一方、関連がないとの報告があり、未だ議論の余地がある。我々は、血中アディポネクチンとは別に臓器特異的に結合するアディポネクチンの存在を見いだしている。本研究では、血圧と心肥大に対する血中アディポネクチン濃度と心筋結合型アディポネクチン量の関係について正常血圧ラット、高血圧ラット、脳卒中ラットを用いて検討した。血中アディポネクチン濃度に対する血圧及び心肥大率(心重量/体重)では負の相関関係はみられなかった。一方、心筋結合アディポネクチン量は、脳卒中ラットにおいてのみ有意な減少が確認された。アディポネクチンの受容体であるT-cadherinにおいても同様の結果が得られたので、これはT-cadherinの発現減少によるものであると考えられた。正常血圧ラットと高血圧ラット間において心筋結合型アディポネクチン量に有意な差はみられず、心筋結合型アディポネクチンと血圧の間には関連性がない事が示唆された。組織学的解析によって得られた結果と心筋結合型アディポネクチン量の相関性を調べたところ、両者の間には負の相関関係がみられた。アディポネクチンの疾患との関係性は、必ずしも血中濃度に依存しないことが明らかとなった。一方、心筋結合型アディポネクチン量は心肥大との関連性があり、その重要性が示された。平成28年度は、心筋結合型アディポネクチンの作用メカニズムを明らかにするために、心筋細胞を用いて解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
心筋結合型アディポネクチンと心肥大の関連に関するメカニズムを解明するに当たって、当初は扱いやすさから、ラット心筋細胞株H9c2を用いてT-cadherinノックアウト株を作製した。しかしながら、T-cadherinノックアウト株は分化培地において分化能を欠いたため、現在はラット心筋初代培養細胞で解析中である。
心筋結合型アディポネクチンの細胞レベルでのメカニズム解析結果をまとめつつ、最終年度に計画しているアディポネクチン投与による脳卒中ラットSHRSPにおける心疾患に対する治療的効果について解析を行う。
マイクロアレイの試薬が新製品の発売に伴い、価格が半額程度にまで下がったため、見積額を下回った。
平成29年度は、ラットへの投与に使用するオスモティックポンプ、実験動物、解析に使用する抗体、ガラス、プラスティック等を計上している
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Mol. Neurol.
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10.1007/s12035-016-0166-y