昨年度までに心筋結合型アディポネクチンの結合量と心肥大の間に負の相関関係があることを示した。しかしながら、その関係性についての詳細なメカニズムは未だ不明である。平成29年度は、正常血圧ラット(WKY)、高血圧ラット(SHR)及び脳卒中発症ラット(SHRSP)の左室壁に対してマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行い、心筋結合型アディポネクチンと心肥大の関係性を明らかにすることを試みた。Fold changeを1.5に設定したときに発現の増加がみられた遺伝子数はWKY vs SHRでは、それぞれ120個と118個であり、WKY vs SHRSPでは199個と308個、SHR vs SHRSPでは、88個と181個であった。更にIngenuity Pathway Analysisを用いた解析では、全ての比較において共通して差がみられる遺伝子が36個、WKY vs SHR とWKY vs SHRSP 間で共通して差がみられる遺伝子が264個、WKY vs SHRSPとSHR vs SHRSPにおいて共通して差がみられる遺伝子が257個、WKY vs SHR とSHR vs SHRSP間で共通して差がみられる遺伝子が69個という結果が得られた。このうち、心筋結合型アディポネクチンと心肥大の関係性からWKY vs SHR とWKY vs SHRSP 間で共通して差がみられる遺伝子264個の遺伝子に特に焦点を置いた。その結果、264個遺伝子群の中から特に心筋結合型アディポネクチンとの関連性が考えられる遺伝子を13個にまで絞ることができた。現在は絞り込まれた遺伝子について、細胞株への導入実験を行っている。今後は、これらの遺伝子が心肥大や高血圧のバイオマーカーや治療の標的となり得るかについて研究を行っていく。
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