研究課題/領域番号 |
15K01825
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
坂本 寛 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (70309748)
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研究分担者 |
平 順一 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (20549612)
小松 英幸 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (90253567)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヘム / センサー / 生体分子 / 酵素 / 分析科学 / 計測 / 定量 |
研究実績の概要 |
目的 ヘムは分子補欠族として様々なヘム蛋白質の機能発現に寄与しているが,近年,遊離状態のヘムが転写制御因子の活性化に関与している事例が次々に明らかになり,細胞機能に対する調節作用も有していることがわかってきた。しかし,細胞内に遊離ヘムがどのぐらいあるのか,またどこにあるのかさえ未だ明らかにされていない。そこで,我々は独自に開発した蛍光ラベル化ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)をヘム特異的ヘムセンサーとして用いるヘム定量法により次のことを行う。①組織,細胞などの生体由来サンプルを用いてヘム濃度を計測できる測定系を確立する。②センサーを改良し,遊離ヘムが細胞内のどこにあるか,その動態を明らかにするためのプローブを開発する。それにより,遊離ヘムの細胞内動態を明らかにする。 結果 ①現行センサーを用いた生体試料中のヘム濃度測定法の確立:生体由来サンプルとして,臓器不全モデルラット肝ミクロソーム画分(A)およびダール食塩感受性モデルラット血清(B),イヌ組織球肉腫株化細胞ライセート(C)を用いてヘム定量を試みた。その結果,Aについては総ヘムおよび遊離ヘムを定量することができた。一方,BとCでは,遊離ヘムがサンプル内タンパク質に非特異的に吸着していることが示唆されたため,界面活性剤を用いたサンプル処理方法を検討した。 ②遊離ヘム特異的蛍光プローブの開発と細胞内ヘムの動態観察:ヘムセンサーの細胞内での発現および細胞内遊離ヘムの観測を目指して,蛍光タンパク質(EGFP, BFP, hmKO2)融合型HO-1を調製し,ヘムセンサーとしての機能を検討した。その結果,いずれの融合タンパク質もヘム添加によりヘム-HO-1複合体に特徴的な吸収(405 nm)増大がみられ,ヘムと化学量論的に結合することが確認された。しかし,ヘム添加に伴う蛍光の消光が観測できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存のヘムセンサーを改良し,ヘム分解活性をもたず,野生型HO-1よりも10倍高親和性で,生体成分由来の紫外蛍光から妨害を受けにくいセンサーを開発した。そのセンサーを用いて,臓器不全モデルラット肝ミクロソーム画分中の総ヘムおよび遊離ヘム濃度を測定し論文として発表できた(Anal. Biochem. 489, 2015)。また,新規センサーの開発では,蛍光タンパク質融合型HO-1の発現ベクターを構築し、大腸菌BL21(DE3)株内で発現後、目的タンパク質を精製することができた。
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今後の研究の推進方策 |
臓器不全モデルラット肝ミクロソームにおいてはリポ多糖投与後の遊離ヘムおよび総ヘムの濃度変化を観測し,ヘム動態とショック症状との関連性について検討する。また,ダール食塩感受性モデルラット血清およびイヌ組織球肉腫株化細胞ライセート中のヘム測定では,条件の最適化をさらに進める。さらに,蛍光タンパク質融合HO-1では,ヘム結合に伴う蛍光消光が効率的に起こるように蛍光タンパク質とHO-1との位置を入れ替えた変異体を作製し,ヘム応答性を確認する。そして,蛍光顕微鏡を用いた細胞内遊離ヘムの可視化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入において,実験に必要な消耗品が一部値下がりしていたためわずかな差額(マイナス16円)が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品購入の際に使用する。
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