研究課題
ヘムはヘム蛋白質の補因子として機能する一方で、ヘム蛋白質に結合していない遊離ヘムが、転写等の調節に関わることが明らかとなっており、ヘムのシグナル分子としての機能が注目されている。近年、ヘムに対して高い親和性を持つヘム蛋白質をベースとしたバイオプローブに関する報告が相次ぎ、細胞内の遊離ヘム分析におけるパラダイムシフトが起きつつある。我々はラットヘムオキシゲナーゼ1(rHO-1)を低分子量蛍光色素で化学的に修飾したヘムセンサーを用いて、センサー分子へのヘムの結合に伴う蛍光消光をもとにした生体サンプル中の遊離ヘム定量を試みてきた。本研究では、低分子量蛍光色素の代わりに緑色蛍光蛋白質(EGFP)をrHO-1にコンジュゲートしたキメラ蛋白質を細胞内に発現可能なバイオプローブとしてデザインし、細胞内遊離ヘムの定量評価に向けた基礎的な検討を行った。rHO-1のN末端にEGFPを融合したEGFP-rHO-1にヘムを添加していくと、ヘム濃度に対して化学量論的な蛍光消光を示した。rHO-1はヘム分解酵素であり、細胞内へのEGFP-rHO-1の発現は内在性ヘムを分解することが懸念されたため、細胞内への導入に向け、EGFP-rHO-1のcDNAに対し、潜在的ヘム分解活性を消失させる変異(D140H)を導入した(EGFP-D140H)。EGFP-D140Hのヘムに対するKd値(1.44 ± 0.42 nM)は、疾患との関連が指摘される細胞内ヘムを検出する上で良好であると考えられた。EGFP-D140HをCOS-7細胞内に一過的に発現させ、10 microMのヘミン、またはヘムの生合成を亢進する2 mMの5-アミノレブリン酸で細胞を処理した際、ライセート中の総ヘム量の増加に対応したEGFPの蛍光消光が確認され、EGFP-D140Hが細胞内ヘムプローブとして利用可能であることが示唆された。
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