研究課題/領域番号 |
15K01891
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
李 里花 多摩美術大学, 美術学部, 准教授 (50468956)
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研究分担者 |
菅 美弥 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50376844)
佐原 彩子 大月短期大学, 経済科, 助教 (70708528)
兼子 歩 明治大学, 政治経済学部, 講師 (80464692)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイノリティ研究のリンケージ / 環太平洋(史)・トランスパシフィック / 移民とアイデンティティ / ジェンダー・セクシュアリティー / 移民政策とセンサスのリンケージ / アメリカセンサスと人種分類 / 難民 / 人道主義 |
研究実績の概要 |
マイノリティ研究と環太平洋的視点のリンケージ構築を目指し、今年度は研究会と講演会を次のように実施し、アメリカのマイノリティ(史)についての理解を深めた。(1)アジアとアメリカにおける移民難民問題について(6/12、カリフォルニア州立大学サンディエゴ校教授Yen Le Espiritu講演6/26)。(2)アメリカにおけるTranspacific論の発展について(11/27)。 (3)アメリカ史学会12月例会の後援と参加。尚、代表者・分担者の調査研究は次のように行った。 李―『「国がない」ディアスポラの歴史』を執筆(9月刊行)し、移民のトランスナショナリズムとアイデンティティ形成についての研究を進めた。また在日コリアンの語りに関する調査を実施し、日米コリア系移民の語りの比較を行った。 兼子―共著『グローバル・ヒストリーとしての「1968年」』にて「〈新しい女性運動〉とその後」の執筆を担当し、6月に刊行された。6月7日にはアメリカ学会部会Eにて、新自由主義と同性婚運動の関係に関する報告を行った。また8月29日から9月7日にかけてサンフランシスコで同性愛権利運動に関する史料調査を行った。 佐原-5月24日に行われた歴史学研究会総会、現代史部会においてアメリカ難民政策の人道主義と新自由主義に関しての報告を行った。内容については論文として増刊号に掲載された。また、6月7日にはアメリカ学会年次大会部会Dにて、ベトナム系アメリカ人のオーラルヒストリーについて報告した。 菅―米国センサスにおける①人種化のロジックと移民政策とのリンケージ「アジア系」という現代のセンサスにおける人種分類を歴史化し、「アジア」の概念図が如何に出来ていったかを、19世紀後半から20世紀にかけて中国人、日本人と、シリアやアルメニアといった、異なる「アジア」からの移民に対するセンサス調査の実態を解明する論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイノリティ研究の環太平洋的リンケージ構築に向けて、2015年度は環太平洋的リンケージ構築を目指すアメリカ側のマイノリティ研究の流れについて理解を深めることができた。2016年度は日本におけるマイノリティ研究について理解を深め、日本側からマイノリティ研究のリンケージについて検討する予定である。尚、代表者・分担者の調査研究については、以下のように進めた。 李-1970年代から80年代に出版された在日コリアン2世の語りに関する調査を実施し、日米のコリア系移民2世の語りについての比較研究を進めることができた。また中間報告としてハワイ大学のシンポジウムで発表し、日米韓の研究者と問題意識を共有することができた。 兼子-アメリカでの史料調査により、1950年代の同性愛権利運動の史料収集をある程度進めることができた。また、アメリカ同性愛権利運動の歴史に関する二次文献の収集と読解を進めることもできた。日本の同性愛史に関しては、二次文献の収集をある程度進めることができた。 佐原-2015年はアメリカの難民政策について研究を進めた。アメリカの移民政策と難民政策の関わりを調べた結果、移民としての受け入れを拡大しないための政策として、難民政策が立案実行されたことが明らかになった。 菅-研究補助を最大限有効に活用して、課題遂行に必須の手書きの調査票を1790年の「自由黒人」から時代・地域を横断して収集しデータベース化する作業に、今年度非常に大きな進展があった。研究の中間報告として学会での共同発表を行い、論文を公刊したこととにも鑑みて、大きく進捗があったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は日本におけるマイノリティ研究について理解を深めることを目的に、在日コリアン研究、在日ブラジル研究、ジェンダー・セクシュアリティ研究、移民難民研究の第一線の研究者を講師に招き、意見交換を行う予定である。尚、代表者・分担者の調査研究については、以下のように進める予定である。 李-戦後の在日コリアンの言論活動と文化活動についての史料収集とインタビュー調査を実施し、日米の比較研究を進めるとともに、コリア系移民の二次資料の収集と分析を行い、アジアとアメリカという視点からコリア系移民の研究史の整理を行う。 兼子-戦後アメリカでの同性愛および権利運動に関する史料収集をさらに進めるとともに、収集した史料を分析する。また戦後日本の同性愛史に関する二次文献の読解と一次史料の収集を行う予定である。両者のあいだの連関を、史料分析を通じて検討することを今年度の課題とする。 佐原-調査については2016年に実施し、アメリカ難民政策および難民コミュニティ形成について明らかにしたい。第二次世界大戦以降、難民政策が制度化していった歴史的背景も考慮にいれつつ、難民政策に関わった諸団体についても調査したい。 菅―昨年度同様に、研究補助への指導を徹底しながら、調査票収集を効率的に行い、19世紀中葉から20世紀初頭までを対象として、中国人移民、日本人移民などの「アジア」からの移民とアルメニアやシリア移民などオスマン帝国から移住した人々の人種化とホワイトネスの境界線策定の異同について、検証することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた調査を次年度へと変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
調査のための旅費、データ解析のための謝金、研究業績の国際的発信を目的とする英語論文の校閲のための謝金として使用する予定である。
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