明治以降行われてきた日本音階の研究において、陽音階(半音を含まない5音音階)に関する考察については現在まで混乱が続いている。最も大きなものは民謡の研究家であった小泉文夫によって提示された民謡音階(例としてレを主音とすれば「レファソラドレ」)をめぐる問題である。小泉はレを主音、ソを副主音とした。これに対し、近世邦楽研究の立場から大塚拜子は、小泉の民謡音階は近世邦楽に適用できず、ソを主音としレを副主音とするべきとした。本研究では、近世邦楽と民謡の比較から両者の矛盾点を克服し、陽音階の新しい分類法を提示した。
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