研究課題
基盤研究(C)
鎌倉期には仏教の基本的な修行項目である三学(戒・定・慧)を兼備することを願い、諸宗兼学への強い志をもった遁世僧が輩出する。本研究では、彼らの中でも説話集作者として名高い、慶政(1189-1268)と無住(1226-1312)の著作を主たる対象として、そこに律や禅といった宋代仏教の影響を具体的に指摘するとともに、その成立背景についても明らかにした。さらに、そうした志向性をもった遁世僧の文化圏で生成する特有の説話世界についても考察を行った。
日本中世文学
遁世僧の間で中国・南宋との文化交流が活発に行われた鎌倉時代、自ら南宋に留学したり、入宋僧ゆかりの寺院で修学したりすることにより、宋代の最新の仏教典籍に触れ得た遁世僧たちがいかに大きな知的刺激を受け、自らの著作活動に結実させていったか、鎌倉期遁世僧の文芸の営みを日宋交流史の中に位置づけて捉えようとした点に本研究の学術的・社会的意義は存する。