二つの研究の柱を設けて研究を進めた。一つ目は医学に於ける「鬼」病の研究である。日中の医学では「鬼」などの霊的なものを病因と考え、それに医学的対処が可能であるとすることがあった。また医学が呪術を取り入れることもあった。「鬼」病に医学的対処が可能であったのは、「鬼」の物質化とでもいうべき発想が背景にあったことが挙げられる。 また、『医談抄』について、上古からの権威的医療である脈診や鍼の有効性を、衰退史観を言い立てることによって否定していること、説話として治療事例を引用することによって医療のあり方を説くという性格があることを明らかにした。
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