本研究は、17世紀の武家歌人の和歌を通じた交流と、それぞれの文芸活動について明らかにすることを目的としたものである。3年間で、次のような成果が得られた。まず、17世紀の武家歌人は、堂上和歌の表現、特に後水尾院の和歌表現を用いて歌を詠んでおり、師事している歌人の所属している歌壇の好みが反映されていることが分かった。小笠原長勝・蜂須賀綱通・青山忠雄らは、指導者である飛鳥井雅章の特異な表現を用いていることも判明した。肥前島原松平文庫・宮城県図書館伊達文庫の歌書を調査すると、近世初期に歌書がまとめて書写された可能性を指摘できる。これらは、公家歌人の指導者を介して同時期に収集されたと考えられる。
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