本研究は、重要でありながらもこれまでひどく立ち後れていた、江戸時代の歌合を総合的に考察するものである。時代的には幕初から幕末までを対象とするが、適宜、安土桃山期および明治初期までも視野に入れて、江戸期の全体像を見据えるものとする。 2年目である今年度は、初年度に引き続き研究基盤の整備に配慮しながら、主として近世歌合伝本書目編纂のためのデータ収集作業を精力的に進めた。刊本には関してはある程度全体像を見渡すことができるようになったものの、依然として、写本の伝存量の把握には難渋しており、今後とも粘り強くこの地味な作業を継続させて、刊本と写本双方にわたる伝本情報の充実を図りたいと考えている。関係文献の調査にあたっては、公共図書館に所蔵されているものを優先するのは当然であるが、一部個人蔵のものに関しても可能なところから調査を開始したい。WEB上で公開されている資料についても、鋭意活用していく予定である。 なお、2017年3月8日と9日の両日にハイデルベルク大学(ドイツ)で開催された「ハイデルベルク写本版本国際集会2017」において、「古義堂の歌人―恵藤一雄について―」と題する研究発表を行い、本研究成果の一部を反映させた。また、『江戸職人歌合』(「江戸職人尽歌合」とも。石原正明編・文化5年刊・2冊・永楽屋東四郎版・絵入り)に関しても、個別に「解題」を執筆した。後者の成果は2017年度中に公刊される予定である。
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