本研究は、重要でありながらもこれまでひどく立ち後れていた、江戸時代の歌合を総合的に考察するものである。時代的には幕初から幕末までを対象とするが、適宜、安土桃山および明治初期までも視野に入れて、江戸期の全体像を見据えるものとした。 最終年度である今年度は、これまでの蓄積を継承しつつ、近世歌合伝本書目編纂のためのデータ収集作業を文字通り精力的に進めた。伝本書目なるものの性質上、完璧な達成にはさらなる時間が必要であり今後も調査を継続させるが、これまで4年にわたって調査研究を進めてきたことにより、おおむね江戸期の概況を把握することはできたと考えている。 具体的な研究成果としては、まず、神作研一「近世歌合の諸問題(仮)」なる小論をものした。これは、かつて2017年度に龍谷大学仏教文化研究所主催の研究会において発表した内容に基づき、なおその後の調査と検討を加えたもので、龍谷大学の安井重雄教授を代表とする共同研究(指定研究)「龍谷大学図書館蔵蘆庵本歌合集の研究」の研究成果物として2019年度中に公刊される予定である。また、歌合を含む歌書の刊本に関しては、武蔵野美術大学美術館における特別展示「和語表記による和様刊本の源流」(代表 新島実教授)のオープニング対談(ロバート キャンベル×神作研一)「江戸の出版」(2018年11月1日、武蔵野美術大学美術館ホール)においても、適宜言及したことを添記しておく。
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