本研究は、19世紀以降アフリカ大陸で展開された数多い「局地戦争」のなかでも19世紀末南アフリカで勃発した「ボーア戦争」、ならびに20世紀中葉に東アフリカ英領ケニアで土地奪還から始まり最終的には独立運動へと展開した「マウマウ戦争」に考察の焦点を定めた。その上で、それらの戦争を扱った文学作品を通して、市井の人々にもたらす戦争の惨禍──文化・伝統の破壊、アイディンティティ・クライシス等──の実態を詳らかにするものである。その際、二人の作家、戦争に直接かかわった、あるいはほぼ同時代を生きたH. C. ボスマン(南ア)とングギ・ワ・ジオンゴ(ケニア)を中心に検討を加えた。
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