本研究では声明譜、特に南山進流講式譜における補助記号「合」「ワル」に注目し、その実態を精査することにより、日本語の長音あるいは連母音が講式においてどのように誦唱されるのか、また譜本上にそれがどのように反映されているのかを確認した。その結果、講式の誦唱では、近世初期から抑揚のない低平調の《角》の部分から[ou]→[o:]の変化がはじまったことなどが推定された。 また、漢語形態素を構成する音節における音素配列について歴史的観点から考察を行い、結合可能な音節数に対する実際に使用されている音節の割合が、12世紀中頃から現代にかけて54%から62%に上がっていることが確認された。
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