これまで統語範疇という言語固有の観点から定義されてきたフェイズ領域を、情報構造、さらに言えば既知・未知という、いわば人間の認知システムに近い別の観点からとらえなおしたという点に、本研究の学術的意義があると思われる。フェイズがヒト言語に固有といわれる統語領域とは別の、認知の観点から定義できるようになれば、生物学的説明を推し進めるミニマリスト・プログラムの主張をさらに裏付けすることができるようになり、説明的妥当性よりもさらに進んだ進化的妥当性を満たす可能性を示唆し、生成文法理論のさらなる展開を推進する一翼を担うこととなる。
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