研究課題/領域番号 |
15K02635
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
大島 弥生 東京海洋大学, その他部局等, 教授 (90293092)
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研究分担者 |
生天目 知美 東京海洋大学, その他部局等, 准教授 (20549042)
山本 富美子 武蔵野大学, その他部局等, 教授 (50283049) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アカデミック・ジャパニーズ / アカデミック・ライティング / 論文作成支援 / 人文・社会科学系論文 / 引用 / 解釈 / 海外の日本語教育 / 教材 |
研究実績の概要 |
IMRAD型の「実験・調査型」論文に比して,従来,ジャンル分析や精緻な教材化が相対的に進んでいなかった人文・社会科学系の論文について,特に資料引用・解釈部分の構造の解明を進めた。「資料分析型」論文における引用と解釈の表現の論理展開の連続体について,分析単位を細分化し,構成要素の抽出を行った。先行研究で「資料分析型」と認められた10論文において,「A中立的引用文」「B解釈的引用文」「C引用解釈的叙述文」「D解釈文」がどのような連続体となって表れるか,その機能とプロトタイプを示した。Aは資料の着目点を中立的立場から引用・提示し,Bは資料を論文筆者の立場から引用して解釈構造の軌道に乗せる。Cは資料との内容的関連性を持たせつつ論文の解釈構造の中で引用叙述し,Dは資料には一定の距離をおいて,読み手を論文の解釈構造の中に巻き込み,主張・結論へ導くといった機能があることを明らかにした。同時にA,B,C,Dの人文科学・社会科学での使用割合を示した(山本・二通2015)。この結果をもとに,論文の冒頭章から最終章までの,構成要素とその文型・表現の抽出・分析を続行している。これらの分類は論文作成支援のための教材の骨格を成すものであり,これをもとに試作教材を作成中である。比較のために,「資料分析型〈質的データ援用型〉」論文以外にも「資料分析型〈量的/量・質データ援用型〉」や「複合型」論文も,分析対象の論文及び例文の収集を進めている。同時に,研究成果を大学院生が口頭で発表する際の音声データを採取し,論文作成の前段階としての口頭発表の論理展開の在り様を記述している。また,教材・指導の方向性について国内外(中国・米国・セルビア等)の日本語教師や人文社会科学の研究者から意見聴取を行い,現行の指導方法での困難点や求められる教材や支援の在り方について情報収集を進め,その結果を試作教材へ反映させつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文の構成要素の抽出および教材作成が順調に進展しており,すでに途中成果を発表したほか,意見聴取も進めているため,上記の区分と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては,人文・社会科学系の資料引用・解釈部分の論理展開について,文学・社会学・歴史学等の「資料分析型・質的データ」論文における構成要素の表れ方の分析を引き続き行い,教材の骨格部分の作成を続行する(H28年度以降研究協力者:山本富美子・二通信子ほか)。同時に,比較対象として経済学・経営学・学際分野等の「資料分析型〈量的データ/量・質データ援用型〉」および「複合型」論文等における引用・解釈部分の抽出と分析を行う。口頭発表における論理展開についても,比較対象としての分析を進める。これらの分析結果をもとに教材の試作を続行し,試作教材にかんして,国内外の日本語教師や人文・社会科学の研究者からの意見聴取を続行するほか,学習者へのモニタリングを行う。また,分析の中間結果に関して,関連学会における報告を行う。平成29年度以降は,これらの成果を受けて,人文・社会科学系分野の留学生・日本語母語話者学生を指導する日本語教師や各分野の教員に対する教材および実践の提案とその実践の試行,モニタリングを行う。さらに,完成途上にある教材を用いて,実践の方法提案,ワークショップを中心とした国内外における参加型研修の提案を行う。研究分担者・協力者とともに研究打ち合わせを随時行いつつ,これらの計画を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費等が予定ほどかからなかった分,研究分担者の1人の出張予定等が一部延期となった分(出産等の理由による)が剰余となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究打ち合わせおよび成果発表のための出張を,平成28年度以降の状況に応じて随時行っていき,剰余額を執行する予定である。
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