研究課題/領域番号 |
15K02654
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
堀 恵子 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (70420809)
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研究分担者 |
内丸 裕佳子 岡山大学, 全学教育・学生支援機構, 准教授 (00550964)
中俣 尚己 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (00598518)
李 在鎬 早稲田大学, 日本語教育研究科, 教授 (20450695)
山崎 誠 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30182489)
小西 円 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (60460052)
建石 始 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (70469568)
江田 すみれ 日本女子大学, 文学部, 教授 (80205583)
加藤 恵梨 朝日大学, その他部局等, 講師 (70770311)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本語教師支援 / 自律学習支援 / 文法項目 / 検索エンジン / 意味記述 / 品詞分類 / 接続形式 / 学習者コーパス |
研究実績の概要 |
機能語用例文データベース『はごろも」』は,web 上で機能語の一部を検索すると,意味,難易度,作例,話し言葉と書き言葉の用例などが見られるツールで,web検索版とダウンロード版とで公開している。利用者として,世界中の母語と非母語の日本語教師,中級以上の学習者を想定している。本年度は国内外の学会発表,デモンストレーションを通して利用者から得た要望や提言を受けて,より使いやすく,文法教育,文法学習に資するよう下記の5点を改訂のポイントとして,引き続き作業を行っている。 (1)見出し語を精査する,(2)当該項目の文中での機能を明確に示すために,文法カテゴリーの情報をつける,(3)意味の記述を精査し,階層のある分類とする,(4)文法項目の前接の形式を明示する,(5)学習者作文コーパスから学習者の正用,誤用の文を学習者レベルと共に示す。 品詞分類班は,(1)と(2)を担当する。(1)見出し語の精査では,派生による項目などを「派生語」として表示することとし,項目を整理している。(2)文法カテゴリーの情報の付与では,全見出し語について品詞分類の作業を一通り行った。文法班は,(3)と(4)を担当している。(3)については,上位の階層として54の意味大分類を設定し,見出し語を振り分け,意味の用語を精査する作業を行っている。(4)については,日本語学習者にとって見出し語の前に来る形式の情報は必須であることから,記述を進めている。 データベース班は,(5)を担当し,機能語用例データベース「はごろも」で表示する母語話者コーパスからの用例を充実させるため,新聞コーパスから用例抽出を行った。また,文法習得に関する情報提供のため,学習者の正用例,誤用例を抽出する作業を行っている。 国内外の学会において品詞分類の進捗に関するポスター発表,デモンストレーション,進捗状況と今後の展望に関する口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
品詞分類班は,1年間に12回の会合を持ち,見出し語を精査し,品詞カテゴリーの情報を付与するために,具体的に以下の作業を行ってきた。①文法カテゴリーのラベルを決定し,「文法機能」の下位に「文型」「慣用表現」「活用」「敬語」「品詞」を置くこととした。②見出し語のうち,派生によると見なせる見出し語や,肯定/否定の両方がある形式は1つにまとめ,「派生語」として表示することにした。その結果,見出し語は1,744項目となった。③見出し語の表記について,文法班とすりあわせをして決定した。 文法班は,「はごろも」公開当初620に上った意味の用語を精査し,先行研究の分類を参考に54の意味大分類へと振り分けることにした。すでに639項目の分類を終えた。意味記述については, BCCWJにおける出現傾向や文法解説書の記述も参考にしながら,①当該文型の簡単な言いかえ,②主に使用される表現形式に関する情報,③必要の応じて話し言葉と書き言葉,プラス・マイナス評価に関する情報への言及,の3点を含む意味説明の記述を進めている。 データベース班は,母語話者コーパスからの用例を充実させるため,新聞コーパスから初級前半,初級後半,中級前半の項目の用例を抽出した。抽出作業に先だって,新たに「学習項目解析システム」を用いてテキスト解析を行った。その上で,日本語教育経験の豊富な研究協力者によって,見出し項目の意味に合う用例を選択した。さらに,『日本語学習者作文コーパス』に基づいて,システム利用者にとってわかりやすい正用例,誤用例を抽出するよう,日本語教師の協力者による作業を進めている。 国内外の学会において3回に亘って発表を行い,広く成果を共有した。また,日本語教師から「作文などの産出活動を目的として,述べたい意味や機能から文法項目を探せるようにしてほしい」との貴重な意見を聞くことができ,意味記述の方針の参考とした。
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今後の研究の推進方策 |
品詞分類班は,見出し項目と文法カテゴリーの情報の見直しをすすめ,二巡したところで決定版を夏までに作成する。 文法班は,意味大分類への振り分けが残る項目の作業を進めると共に,意味説明の記述を引き続き継続する。同時に,前接の形式の記述も行っていく。 データベース班は,学習者コーパスからの用例抽出を夏までに終える。 秋以降は,3班の成果である全データを統合し,新たな表示項目を含め,web画面を更新すべく,デザインを選定,試行期間を経た後,新たな検索システムに移行していく。 また,今後も公開シンポジウムや学会発表などの場を通じて,機能語用例文データベース「はごろも」の研究成果を広く共有し,日本語教育における文法研究,文法教育について学術的議論を行う。さらに,ダウンロード版の文法項目一覧も含めて,このシステムを日本語教育現場においてどのように役立ててもらえるかに関して,デモンストレーションや発表でシラバス作成,教材・テスト作成への応用例を示すなどして,日本語教師,日本語学習者の理解を深め,普及に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者によって状況はいくらか異なるが,大別すると事由は2点である。①学会出席のための出張費に使用する予定であったが,諸事情から出席しなかった,あるいは他の資金を用いた,②データ解析に使用する予定であったが,研究協力者の事情により,解析作業を次年度に変更したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,①学会発表のための出張費に充てる,②研究協力者にデータ解析を業務委託し,当初の3年の計画を予定通りに終了する。
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