研究課題/領域番号 |
15K02667
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
毛利 貴美 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 准教授(任期付) (60623981)
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研究分担者 |
古川 智樹 関西大学, 国際部, 准教授 (60614617)
中井 好男 同志社大学, 日本語・日本文化教育センター, 助教 (60709559)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 講義理解 / ノートテイキング / メタ言語 / OCW / マルチモダリティ / Web講義 / アカデミック・リスニング / 学習者オートノミー |
研究実績の概要 |
■量的調査1(Web講義におけるマルチモダリティ研究):Web上に公開されている日本の大学のOCW(Open Course Ware)30校の講義、合計2000編を対象に、各講義の①講義の時間的な長さ、②講義形式、③内容について分析を行った。さらに、マルチモダリティの理論的フレームワークから講義担当者の言語・非言語行動について分析を行った結果、メタ言語の重点提示の部分で特徴的な非言語キューやパラ言語的特徴が確認された。(主担当:古川) ■量的調査2(講義理解過程の研究):本調査では、日本の大学3校に在籍する日本人学生(NS)30名、外国人学部生30名(NNS)を対象に、大学のOCWの講義ビデオを視聴させ、Livescribe社製「echo smartpen」を用いて音声とノートの記録を行った。同時に再生刺激法によるフォローアップ・インタビューを行い、分析した。2015年には寅丸(2010)のメタ言語の機能分類の各分類項目におけるノートテイキングの量的分析を行った結果、NSが「話題提示/重要提示/疑問提示」の項目で多くなっており、t検定を行った結果、「重点提示」において有意な差が確認された。インタビューでも講義の談話におけるメタ言語に言及した回数がNSはNNSの約5倍となり、メタ言語が講義理解過程に大きく影響する要素であることが確認された。(主担当:毛利)。 ■質的調査(交換留学生の講義理解における学習者オートノミーについての研究):日本の大学3校にて実際に日本語での講義を受講している交換留学生15名に対し、2016年度秋学期の初め、中間、終了時点の計3回に渡って縦断的にインタビューを行った。現在の分析状況から、日本語能力レベルが低い調査対象者に生じた問題や自律的に克服している実態が質的な方法論による分析により、明らかになると考える(主担当:中井)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
■量的調査1に関しては、これまで約30の大学における2000編のWeb講義を対象として調査を行ったが、教育領域においてICTを利用したコンテンツの開発が顕著であり、この1年で急激に分析対象のWeb講義が増えたため、最新の情報を収集しつつ、分析を進めた結果、当初より予定が遅れている。 ■量的調査2に関しては、本研究を申請した当初10名の日本人学生に対する調査の予定であったが、留学生に対する日本語教育の視点から留学生10名に対しても調査分析を行い、比較した結果、メタ言語利用の点から研究成果が見られたため、一般化を目指して新たに20名の学部留学生と20名の日本人学部生を調査対象として加えた。調査は全て完了しており、現在は分析を進めているところであるが、調査対象者を増やしたことで文字化と分析に時間がかかっている。 ■質的調査を2016年度に新たに開始し、留学生15名を対象に各大学3回(計9回分)のインタビューを行った。これらの調査も全て終了しており、現在は文字化データを分析途中である。 このように2016年度に当初予定していた以上の調査を行い、それらは全て終了しているが、現在増加したデータを分析しているため、研究成果を発表する段階が当初の予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は最終年度として、2015年度ならびに2016年度に行った全ての調査の分析を進め、関連する学会において発表と投稿を行う。 ■量的調査1は、2017年8月30日~9月1日のヨーロッパ日本語教育シンポジウムにて、重点提示機能を持つメタ言語に関わるマルチモダリティについて発表を行うことが決定している。その後、ヨーロッパ日本語教育学会の予稿・論文集にて記載される予定である(主担当:古川)。 ■量的調査2は、今後さらにデータ分析を進め、2017年度秋学期の学会で発表を行い、9締切の学会誌への投稿を行う予定である(主担当:毛利)。 ■質的調査については、6月締切の大学の研究雑誌に投稿を行い、また、7月の留学生教育関係の大会にて発表を行う予定である(主担当:中井)。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度後半に①量的調査1のインタビューの調査協力者を40名増やして調査を行ったこと、②質的調査で15名の調査協力者に対し、それぞれ3回のインタビューを行い、順次、 文字化業者に発注していたが、予定よりも多くのデータを発注したことから時間がかかり、支払いが2017年度4月となった。 また、調査協力者の人数を上記①②のように増やしたことからデータの分析に時間がかかり、予定していた国内の学会での発表の時期を2017年度に延期したため、学会出張費が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度は、8月20日から9月3日に開催されるヨーロッパ日本語教育シンポジウムにて発表が決定しており、その他、国内での学会発表を少なくとも2回行うことを予定している。次年度使用額をこれらの出張費として使用することを計画している。
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