研究課題/領域番号 |
15K02716
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩居 弘樹 大阪大学, 全学教育推進機構, 教授 (20213267)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ビデオ撮影 / 音声認識 / 発音練習 / 例文データベース / アクティブラーニング |
研究実績の概要 |
平成27年度は、音声認識システムによる発音自律学習とビデオ撮影プロジェクトを統合したドイツ語アクティブラーニングの実践を行い、基礎データの収集を行った。 音声認識システムによる発音自律学習に関しては、平成27年度中に約100名の学生からのべ1500件を超える認識結果のデータを収集することができた。現在これを分析中であるが、以前実施した音声認識システムを使った発音練習に関する研究の結果と同様に、日本人学生が問題なく認識される発音と、困難な発音があることが追認できた。また、調音に関する基本的知識を与えることで改善が見られるケースもあるが、個別にフィードバックしながらトレーニングを繰り返すことで改善されるケースも多い。本研究の課題の一つである「発音学習支援ツールの開発」について、その方向性を再検討する必要を感じている。 ビデオ撮影プロジェクトは、平成27年度前期・後期に実施し、合計6回のビデオ撮影を行った。前期は主にグループでのミニドラマ制作を中心に行い、後期はグループを超えたインタビューや、ビデオストーリーテリングを試みた。まだ数値化はできていないが、撮影1週間後はほぼシナリオの内容を書き出したり再現することができ、夏休みを挟む2ヶ月のブランクの後も、かなりの割合で記憶に残っていた。このことから、ビデオ撮影が記憶への定着を促進していると想定できる。ビデオ撮影のための準備時間についてはアンケート調査から大まかな把握ができた。 ビデオ撮影のためのシナリオ作成の際にオンライン例文データベースを使用し、学習者が積極的に活用する様子が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
音声認識システムによる発音自律学習、ビデオ撮影プロジェクトの実施と基礎データの収集分析、オンライン例文データベースの利用実験など、平成27年度に計画していた内容は順調に進んでいる。特にICT機器を活用したアクティブラーニングの実践については、先進的な取り組みを行っているApple Distinguished Educator メンバーからの助言をうけ、iTunesU に概要を紹介するコースを作成した。 1年間の実践と分析から、音声中心の学習を支えるために必要な文法知識や語彙学習などの自習できる教材を追加で開発を始めた。また、学習者のグループ活動や教師と学生のインタラクションをビデオに記録し分析することで、いわゆるアクティブラーニングの中での学習者の動向を客観的に知ることができるようになった。さらに、ビデオ撮影プロジェクトのような声を出す学習方法が記憶への定着を促進していることを示すと考えられるデータも取得できた。これらに加えて、音声中心の学習を支えるため、文法語彙の関する学習ツールや理解度チェックツールの開発も開始した。 このように、当初の計画を実施する中で新たな可能性を見出しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の実践を踏まえながら、引き続き実践と調査、分析を継続する。特にビデオ撮影プロジェクトではルーブリック評価を試行し、その課題や問題点を探る。音声認識システムによる発音学習については、教員からのフィードバックと学習者の反応、発音の改善について調査観察を行い、音声認識システムの有効活用法について再検討を行う。 シナリオ作成における例文データベースの活用についても、授業中のグループ活動を記録・観察しながら効果的な活用法を探る。 ここまでに得られた成果について、Apple Distinguished EducatorのカンファレンスやCIECなどの学会で発表を行い、様々な専門家からのフィードバックを得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
国外出張経費(シンガポール)が計画より大幅に少なかったため
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次年度使用額の使用計画 |
夏にベルリンで開催される予定のApple Distinguished Educatorカンファレンス参加費用として使用する
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