本研究では,第二言語使用者にとって習得が難しい領域である定型連語の処理と産出について調べた.その結果,中級レベルの使用者でも,定型連語をそうでない語の並びよりも速く,正確に処理することがわかった.一方,使用面については,英語圏での5か月間の言語経験の後,語彙知識やライティング力は向上するものの,定型連語の使用は変化がないことがわかった.このことから,十分な運用のためには、一定レベルの第二言語発達が前提であり,中長期的に豊富な言語経験を得ることが必要であると示した.さらに,自然で流暢な言語運用のためには,定型連語を教授項目として位置づけ,それに意識を向けた十分な学習が必須であるとした.
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