研究課題/領域番号 |
15K02810
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研究機関 | 岐阜市立女子短期大学 |
研究代表者 |
小島 ますみ 岐阜市立女子短期大学, その他部局等, 准教授 (40600549)
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研究分担者 |
磐崎 弘貞 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50232658)
原田 依子 東京電機大学, 工学部, 講師 (60714243) [辞退]
金田 拓 帝京科学大学, 総合教育センター, 助教 (10759905)
佐竹 由帆 駿河台大学, 現代文化学部, 准教授 (90754648)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ライティング評価 / テクスト分析 / メタ分析 / ライティング指導 / 語彙知識 / 文法知識 / 統語的複雑性 / 語彙的複雑性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、英語学習者のライティングにおけるさまざまなテクスト特性や学習者の持つ言語知識がライティング評価にどの程度寄与するかについて調査し、ライティング力の構成要素に関するモデル構築を行うことである。本研究結果は、ライティングの指導や評価でどのような点を重視するべきか、また学習者の個人差はどこにあるかについて示唆を与えると期待される。29年度の研究実績概要は、以下である。 1) 27, 28年度に収集した日本人大学生205人分のデータに加え、英語中上級者を中心に44人分の英作文、語彙・文法テストを追加収集し、収集した英作文の電子化・整形を行った。さらに、作文評価を付与し、テクスト特性(流暢性、統語的複雑性、語彙的複雑性、正確性)のコーディングやスコアの算出を行った。 2) 学習者のライティングにおけるテクスト特性とライティング評価の関係を明らかにするべくメタ分析を行った結果について、国際学会や国内のシンポジウムで研究発表を行った。また、執筆した論文についてJohn Benjamins社と共著の出版契約を結ぶことができた。 3) 日本人英語学習者が議論文においてメタディスコースをどのように使用し、どのような不適切使用が見られるかについて、研究結果を論文投稿したところ、Asian EFL Journalに採択された。 4) 英語学習者のテクストから測定される語彙の豊かさについて、構成概念(潜在変数)を測定するには、反映モデルと形成モデルのどちらが適切か、作文データを用いて検討を行った。その研究成果を国内の研究大会で発表した。 5) ライティング指導の教育実践について論文を執筆したところ、Routledge社から共著の出版が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間内に明らかにする研究課題は、主に以下の3つである。1) 英語学習者のライティングにおける言語的特徴とライティング評価の相関関係について、メタ分析による過去の研究成果の統合を行う。2) メタディスコース適切性評価法の開発を行い、それらのスコアとライティング評価との関係を調査する。3) 英語学習者のライティングにおける言語的特徴や学習者の言語知識がライティング評価にどの程度寄与するのか調査し、ライティング力の構成要素に関するモデル構築を行う。 1について、62本の文献を収集し、ライティング力と言語的特徴(流暢さ、複雑さ、正確さなど)の相関関係についてメタ分析を行った。さらに、学習者の個人差(言語知識、動機付け、ライティング不安など)がライティング力とどの程度関係するのかについて、現在メタ分析のための文献収集中である。これら2種類のメタ分析成果について、John Benjamins社と共著の出版契約を結ぶことができた。 2について、日本人英語学習者がエッセイにおいてメタディスコースをどのように使用し、どのような不適切使用をするかについて、調査結果を論文投稿し、Asian EFL Journalに採択された。 3については、約250人分の英作文、語彙テスト、文法テストを収集し、ライティング評価や統語指標のタグ付けを行っている。指標の妥当性調査が十分ではなかったため、現在は統語的複雑性指標の妥当性検証を行っている。また、モデル構築にあたり、形成モデルと反映モデルのどちらが適切か検証が必要になったため、小島 (2011) で収集したデータを使用し語彙的複雑性指標を対象に調査を行った。 さらに、ライティング指導の実践について、Routledge社から共著の出版が決定した。当初予定していなかった調査も加わったが、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は、主に以下である。1) ライティングにおける言語的特徴とライティング評価の相関関係について、最新の文献を加えて再度メタ分析を行い、論文にまとめる。2) ライティングにおける個人差とライティング評価の相関関係について、文献を収集の上メタ分析を行い、論文にまとめる。3) 統語的複雑性指標の妥当性検証を行う。 4)妥当な指標と妥当なモデルを使用し、ライティング力の構成要素に関するモデル構築を行う。 1と2について、John Benjamins社と共著の出版契約を結んでいる。年度内に初稿にまとめ、編者に提出予定である。3について、現在7つの統語的複雑性指標を使用し、妥当性を検証している。結果を夏の全国英語教育学会京都研究大会で発表予定である。さらに指標の数を増やした統語的複雑性の妥当性検証結果について、国際学会への研究発表申請を計画している。4についても年度内に調査を行い、国際学会に研究発表申請を出す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、当該年度中に国際学会での研究発表を2回行う予定が1回のみとなったために生じた。予定の1回を行わなかった理由は、統語的複雑性指標の妥当性について十分に調査できていなかったことと、モデル構築の際の構成概念測定について対立する考え方があるが、本研究ではどちらが適切か検討する必要性が生じたためである。そのような基礎研究が十分にできていなかったため、ライティング力の構成要素に関するモデル構築について国際学会で研究発表を行うことは見送り、基礎的な研究を進めることとした。その成果の一部を国内の研究大会で発表した。 本年度は、まず統語的複雑性指標の妥当性について検証を行う。また、構成概念測定にどのようなモデルを使用したらよいか、引き続き検討を行う。それらを踏まえて、ライティング力の構成要素に関するモデル構築を行い、3月の国際学会で研究成果の発表を行う予定である。前年度の残額と今年度の配分額を合わせ、効率的に研究費を執行する。
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