本研究の課題は、ヨーロッパ中世都市リモージュの二つの宗教施設(サン・マルシアルとサン・レオナール)が、どのようなメディア戦略を行い、人々に訴えかけようとしたのかを、教化政策を分析することによって、具体的に解明することであった。研究の成果として、先行研究では看過されてきた改革文書を用いることによって、1030年代の神の平和の時期は、マルシアルの広報的活動が圧倒的に優位であったが、1060年代に入ると、レオナールの広報的活動が成功し始めることが明らかになった。つまり両者の戦略を時系列に捉えることに成功した。マルシアル修道院のメディア戦略において重要な『ヴァレリア伝』の刊本の欠落箇所を復元した。
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