研究実績の概要 |
本研究は、東南アジア島嶼部において、コーヒー豆栽培をおこなう高地社会の人々の暮らしについて、1)コーヒー豆栽培導入の歴史的経緯と貨幣経済の浸透、2)贈与交換経済の機能と貨幣経済との関係、3)コーヒー栽培に関わる労働以外の時間の使途など生活様式に関して、現地調査と文献調査から明らかにするにあった。 本年度は、インドネシア人研究者であり、インドネシアにおけるプランテーション栽培の調査を行なってきたRudo Wibowo氏の協力を経て、スラウェシ島トラジャ社会(インドネシア共和国南スラウェシ州タナトラジャ県)、スマトラ島バタック社会(インドネシア共和国北スマトラ州)において、現地調査を実施した。 両地域は、東南アジア島嶼部のコーヒーベルト(南北回帰線のあいだの地域)に位置する標高800メートル以上の高地であり、良質のアラビカ種で名高い。欧米や日本のNGO、企業が参入し、「トラジャ」「マンデリン」などスペシャルティ・コーヒーとして、またフェアトレード・コーヒーの付加価値をつけて流通している。いずれも19世紀後半に導入され、基本的に数ヘクタールの土地を所有する小規模生産者による栽培が一般的である。 スマトラ島は、インドネシアのコーヒー生産のおよそ70パーセントを占める。なかでもマンデリンは、年間20万トンが輸出されている。今回現地調査を実施したのは、Mandailing Natal地区であり、年間450トンのマンデンリンが生産されている。近年、政府の保護により認証制度が導入された結果、以前は1kgあたり10,000Rp前後で売られていたものが、現在は1kg35,000Rpで売られるようになった。こうした近年の経済状況の変化が当該社会にどのような影響をもたらしたのか、2019年度に継続調査を計画している。
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