研究課題/領域番号 |
15K03078
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
KUONG TEILEE 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 准教授 (80377788)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アセアン人権宣言 / 立憲主義 / 地域統合 / 人権 / 民主主義 / 地域人権規範 / アセアン政府間人権委員会 / アセアン憲章 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究内容は、アセアン人権宣言についてアセアン加盟国の国内議論を調べることであった。調査地は、主にシンガポールとカンボジアであったが、研究会などへの参加に伴い、そのほかの国々の専門家との情報・意見交換もでき、聞き取り調査対象者は幅広く、元外交官(カンボジア、シンガポール)、上級法務官(シンガポール、フィリッピン)、国家人権委員会委員(マレーシア)、大学教授(カンボジア、シンガポール、ラオス)、非政府人権団体(カンボジア)に及んだ。 結果的に、以下の事情が明らかになった。アセアン人権宣言の必要性について訴え始めたのは、2004年のビエンチャン行動計画を立案した10か国の代表・専門家達の所見により展開したアイディアであった。当時の10か国が選出した専門家の内、著名な国際人権法教授(タイ)と著名なNGOの創設者兼人権活動家(カンボジア)の存在があったため、地域統合に伴い、人権基準の必要性が高く評価されたことが主要な原因であった。しかし、それ以降の加盟国間交渉の段階において官僚や外交官および政府系の専門家が積極的にかかわることにより、多くの国際人権条約の内容と異なる性格を持つアセアン人権宣言の最終案が作られ、現在の内容となった。 これは、同地域の「人権」、「民主主義」、「立憲主義」などの憲法上の基本的概念について加盟国間のみならず、それぞれの加盟国内部においても多様な見解や異なる価値観を存在していることの証しであり、最終的にアセアン人権宣言という文書により反映されていると推測されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アセアン地域のネットワークを利用して、地域内に開催される国際会議などへの参加によって多くの専門家と接触することができて、出張国の数は予定より少なくても一定の専門的な情報・意見交換を行うことができた。従って、当初予定した内容についての調査を早い段階で一定の集約ができた。しかし、若干の確認や資料の収集は関係機関などに訪問し、資料収集に行かなかったが、3年度目の課題に入れ込むことにした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、最後の年度であり、まだ現地調査を行っていない国と機関を訪問し、情報の確認や資料収集を行いたいと思い、フィリッピン、マレーシア、タイ、ベトナム、ラオスへの訪問を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より物品費の支出が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
追加調査のために、出張回数と訪問先の増加を見込む。・
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