本研究では、理念主義に立つ20世紀前半のドイツの法哲学者G・ラートブルフのとくに悪法問題に関する定式(ラートブルフ定式)が、ナチス体制崩壊後及び東西両ドイツ再統一後の二度にわたり、ドイツ連邦共和国司法において受容された経緯を裁判例の検討を通じて明らかにするとともに、同定式に現れたラートブルフの理念主義的法哲学の現代への影響と意義について検討を加えた。そして、ドイツ連邦共和国司法におけるラートブルフ定式の適用が過去の不法の克服に必要であったこと、また正義を法の理念とする理念主義法哲学の精神がアレクシーやドゥオーキンなどの現代の法哲学者にも受け継がれていることを明らかにした。
|