研究課題/領域番号 |
15K03112
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 孝男 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70404001)
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研究分担者 |
木佐 茂男 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30122039)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 審査請求 / 行政不服審査会 / 住民監査請求 / 住民訴訟 / 内部統制 / 自己統制 / 行政不服審査法 / 自治体内弁護士 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の地方公共団体における自己統制法制(行政不服審査、監査委員による監査等)の現状と課題について、東アジア諸国の制度及び運用と比較して明らかにし、総合的な自己統制法制の確立を図ろうとするものである。 研究初年度の平成27年度は、前年に成立した改正行政不服審査法の施行(平成28年4月1日)に向け、各地方公共団体がさまざまな準備を進めてきたところであり、その準備内容をリアルタイムで観察しながらの研究を進めることとなった。 研究代表者・田中孝男は、日本の旧制度の現状を把握して、新行政不服審査法の改革課題をまとめるとともに、韓国の住民訴訟制度の研究も進め、第一弾の総括として『自治体法務の多元的統制』を刊行した。前者に関しては、新法の規定では審理員制度を置かず行政不服審査会等にも付議しない運用に歯止めをかけられないことや、韓国の住民監査請求には署名要件があり提起数も少なく請求認容も乏しいものの、各地方自治団体が法定外で、日本の公的オンブズマンに類する仕組みで市民監査請求制度を設け改善を図ろうとしていることなどを示している。 また、研究分担者・木佐茂男は、この科研費・研究課題に関わる既存の論稿を見直し、関連論考も含め『司法改革と行政裁判』を平成28年3月に刊行した。同書では、地方公共団体における改正行政不服審査法対応のあり方について、組織の整備だけではなく審理の担い手である審理員の人事やその資質向上の必要性と方策についても検討を進めた。 これらのほか、我々研究代表者・研究分担者は、自己統制という観点から、2015年11月に行われた九州大学での弁護士とのシンポジウムでコメントを図るなどして、自治体に採用される法曹有資格者(自治体内弁護士)の採用拡大と、そのあり方に関する知見を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にあるとおり、研究代表者・田中孝男、研究分担者・木佐茂男は、ともに、本科研費・研究課題に関わる基本的な論点に関しての従前の研究を総括する著作を刊行できた。その点では、実態把握に重きを置く当初計画よりも前倒しでの研究を行うことができている。 ただ、外国の調査に関して、韓国側と後述のシンポジウムを平成28年度に計画していることなどで、先送りにした事項もあることから、総括的には「おおむね順調」と評価をした。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、現在、10月から11月にかけて、韓国・地方自治法学会と共催で、このテーマに関連した地方自治法のシンポジウムの実施を検討している。当該シンポジウムの前に国内外に必要な調査に赴いて、実りの多い比較研究の成果を上げたいと企図している。 また、研究分担者・木佐茂男は、平成28年4月から、福岡県の行政不服審査会の委員に就任する予定となっており、守秘義務に抵触しない範囲で、その行政不服審査会委員としての実務経験を踏まえて、本科研費テーマの自治体の自己統制手段としての行政不服審査法運用のあり方を検討することとしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していた国内調査及び海外調査に関連して、韓国から、韓国・地方自治法学会との共催シンポジウムに向けた提案があり、平成28年度にその実施が具体化しつつあったことから、調査等の計画を再構成したところであり、海外機関との調整に時間を要して次年度使用額が生じたところである。
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次年度使用額の使用計画 |
直接費・・・需用費60万円、旅費100万円、人件費・謝金30万円、その他245,105円 間接費・・・36万円
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